杉山の上から青空の透いて見えるほど淡い雲が絶えず湧いて来るのを見たとき、不知不識 そのなかへ吸い込まれて行った。湧き出て来る雲は見る見る日に輝いた巨大な姿を空のなかへ拡げるのであった。 それは一方からの尽きない生成とともにゆっくり旋回していた。また一方では捲きあがって行った縁 が絶えず青空のなかへ消え込むのだった。こうした雲の変化ほど見る人の心に言い知れぬ深い感情を喚 び起こすものはない。
梶井基次郎 / 蒼穹 ページ位置:46% 作品を確認(青空文庫)
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薄く広がった雲
雲の流れ
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前後の文章を含んだ引用
......もうなかった。ただ溪間にむくむくと茂っている椎 の樹が何回目かの発芽で黄な粉をまぶしたようになっていた。 そんな風景のうえを遊んでいた私の眼は、二つの溪をへだてた杉山の上から青空の透いて見えるほど淡い雲が絶えず湧いて来るのを見たとき、不知不識 そのなかへ吸い込まれて行った。湧き出て来る雲は見る見る日に輝いた巨大な姿を空のなかへ拡げるのであった。 それは一方からの尽きない生成とともにゆっくり旋回していた。また一方では捲きあがって行った縁 が絶えず青空のなかへ消え込むのだった。こうした雲の変化ほど見る人の心に言い知れぬ深い感情を喚 び起こすものはない。その変化を見極めようとする眼はいつもその尽きない生成と消滅のなかへ溺 れ込んでしまい、ただそればかりを繰り返しているうちに、不思議な恐怖に似た感情がだんだん胸へ昂 ......
単語の意味
淡い(あわい)
青空(あおぞら)
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵(すがた)
淡い・・・味や色や香りなどが薄い。光や形がぼんやりしている。
青空・・・1.青く晴れた空。雲のない青い空。青く澄んで見える空。碧空。蒼天。
2.他の語に付いて「戸外で行う」「屋外」「露天」の意味を表す。
2.他の語に付いて「戸外で行う」「屋外」「露天」の意味を表す。
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵・・・1.身体の形。からだつき。人のからだの格好。衣服をつけた外見のようす。
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
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烏帽子岳(えぼしだけ)の頂のような形の雲
舟橋 聖一 / 木石 (1949年) amazon
幾百の高速船のように黒い雲が競争する
加賀 乙彦 / 海霧 amazon
煙りのような優しい白い雲がみのるの心を覗くようにしては幾度も通って行った。
田村 俊子 / 木乃伊の口紅 amazon
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今にも雪が降りそうだったが、まだ降り始めてはいなかった。雲はぴくりとも動かず、「ガリバー旅行記」に出てくる空に浮かぶ国みたいに、都市の頭上を重たく覆っていた。地上にある何もかもが灰色に染まって見えた。フォークもサラダもビールもみんな灰色に見えた。こういう日にはまともな事なんて何も思いつけない。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
間違いない。月は二個ある。 ひとつは昔からずっとあるもともとの月であり、もうひとつはずっと小振りな緑色の月だった。それは本来の月よりかたちがいびつで、明るさも劣っていた。行きがかりで押しつけられた、だれにも歓迎されない、貧しく醜い遠縁の子供のように見えた。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 amazon
高く 掛かっていた半かけの白っぽい月がいつか光を増して来た。
志賀 直哉 / 真鶴「城の崎にて・小僧の神様 (角川文庫)」に収録 amazon
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