おにぎりは、室内で食べるとおいしくない。屋外に限る。

炊き立てのご飯でむすぶ塩むすびほど微妙でふくよかな味はない

一日寒空に、切り株の上にさらされていたので、飯粒は一粒一粒ぼろぼろに固くなって、持った手の中からこぼれ落ちる。試みに口に持って行ってみると米の持つうまみはすっかり奪われていて、無味な繊維のかたまりのような触覚だけが冷たく舌に伝わって来る。

秋の新米のおいしさはたまらなくふくよかである。新米を炊いて作った塩むすびが日本の最上のご馳走である。

手にとってほお張ると中身は鮭で、ご飯はふっくらとして甘みがある

おいしいお米は炊いてるときの湯気の匂いから違う。炊き上がってふたを開け、しゃもじでかき混ぜていると昔の炊き立てのご飯を思い出す

鮎寿司は、泳いでいるときが想像できるほど瑞々しい色をしている。味はさっぱりとし、かすかに川の香りが残る。

（いなり寿司）甘辛い油揚げの中にいっぱいつまった飯、じとじと汁がたれそうなかんぴょうの帯。

酸味を押さえて濃厚な味のデミグラスソースは、ふわっと滑らかなオムレツとバターが効いたケチャップライスと合わさって、おいしさが増す

いなり寿司は、力があって大胆でいかにも情が深いという味