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......を耳から遠ざけようとしたのだが、そこで予想外のことが起きた。　正確に言えば、予想外の来訪者があったのだ。　わたしは甲高く短い悲鳴を発し、携帯電話を放った。そして賃貸マンションの壁を移動する、光沢を放つ黒い昆虫を見つめた。素早く斜めに動いたかと思うと、ぴたりと止まり、周囲の様子をすべて観察するかのような不気味な態度を取る。　携帯電話を慌てて拾い、耳に当てると向こう側で、「どうしたんすか、どうしたんすか。大丈夫ですか」と男が慌てふためいている。　呼吸を整え、視線は黒光りの虫から離さ......＜中略＞......すよ。スプレーで」「ないんだけど」「じゃあ、コンビニで買ってくれば」「買ってくる間、どっかに移動してたら、怖くない？」わたしは体を縮こまらせ、壁に背中をつけた。まずい、この部屋は完全に占拠された、あの虫に乗っ取られた、と半ば本気で思った。「窓を開けて、出て行ってくれるように祈る、とか」「それがいいかも」「さらに仲間が入ってくる可能性もあるけど」男が言い、わたしは本気で怒った。「何怖いこと言ってん......