関西風の薄味おでんは、最初はなじめなかったが、酒を飲む席には、この方が好適と思うようになった

海の家のおでんは、泳ぎ疲れた客を考えて、濃い目の味付けになっている

屋台のおでん屋の暖簾のところからモヤモヤと立ちのぼる湯気

おでんは郷土料理であり、すべての日本人のおふくろの味。故郷や家族だんらんに直結するおでんは人の心を豊かにする。

おでんの匂いというのは、うなぎの蒲焼やイカのタレ焼きとともに、遠いところにいる人をも引きつける力がある。その強力で魅力的な匂いが最短距離の眼下から立ち上ってきて、鼻孔に直行する

味噌のコクも砂糖の甘みも最初は主張しないのだ。自分は脇役と心得て、控えめに素材に寄り添っている。どんな味だい、はっきりおし、と迫れば際限なく逃げる。逃げられれば追うのが人情。追うほどに深みにはまる。気が付けば味噌どぶどろの底なし沼。

究極のスローフード。ゆっくりとした時間が贅沢に流れる。

肉の柔らかさを堪能

朝の膳の上には白い味噌汁に高野豆腐に黒豆がならんでいる。何もかも水っぽい舌ざわりだ。

揚げたてがうまい。ふうふう言って食うのがいい。