口紅を塗っていない肌色の唇が、料理の温かさを吸い取ってしっとり潤んでいた。

狼のように飲み食い

食事の支度が調い、しばらく二人は無口になってごはんを食べた。

（うなぎのかば焼き）うなぎには使い慣れないナイフとフォークで格闘したせいで、空になった私の皿には、流血した死体を隠し場所まで引きずったような茶色い跡が残っている。

かの女とむす子は静かに食事を進まして行った。外国の食事の習慣に慣らされて、食事中は込み入った話をしない癖がついている二人は、滑かにあっさり話を交した。

緑鮮やかなグリンピースは、春ならではの味わい

いろいろと料理を出さないと、経営がむずかしい時代に入ってきている

都会で、テーブルについて食べてはものたらなく感じるお料理でも、大平原の中で焚火を目の前にしてたべたら、これ以上おいしく満足するたべものはないと思われる

（食が細く偏食なのは）身体が弱かったせいだったのだと、今になってしみじみとわかった。 　この数カ月、朝食はそうめんときまっていたが、それが一番おさまりがよいのだった。昨年の冬は、たらちり、豚のしゃぶしゃぶ、かきの土手なべですごした。なべものにこったというより、なべものが身体に合ったというのが正しかったのだろう。

とびきり新鮮な材料を、目を見張るような豊穣感を持って、生き生きと料理してある。いわゆる懐石料理めいたものとは全く異なる。独創性に溢れた料理だ。