日の当った風景の象徴する幸福な感情《…略…》そこには感情の弛緩があり、神経の鈍麻があり、理性の偽瞞がある。
梶井基次郎 / 冬の蠅 ページ位置:25% 作品を確認(青空文庫)
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幸せ・満足な気持ち
日差し・太陽光
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前後の文章を含んだ引用
......く影を眺めていた。そして落日を見ようとする切なさに駆 られながら、見透しのつかない街を慌 てふためいてうろうろしたのである。今の私にはもうそんな愛惜はなかった。私は日の当った風景の象徴する幸福な感情を否定するのではない。その幸福は今や私を傷つける。私はそれを憎むのである。 溪 の向こう側には杉林が山腹を蔽 っている。私は太陽光線の偽瞞 をいつもその杉林で感じた。《…略…》はない。全反射がある。日蔭は日表 との対照で闇のようになってしまう。なんという雑多な溷濁 だろう。そしてすべてそうしたことが日の当った風景を作りあげているのである。そこには感情の弛緩があり、神経の鈍麻があり、理性の偽瞞がある。これがその象徴する幸福の内容である。おそらく世間における幸福がそれらを条件としているように。 私は以前とは反対に溪間を冷たく沈ませてゆく夕方を――わずかの時間し......
単語の意味
象徴(しょうちょう)
風景(ふうけい)
象徴・・・シンボル。ある意味を表す記号。具体的でない考えや物事、分かりやすく説明するための用いるもの(こと)。
風景・・・自然の景色。目の前に広がる眺め。その場の情景。
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一九一八年の冬は、民衆の心の上では春であった。
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平野 啓一郎「マチネの終わりに (文春文庫)」に収録 amazon
護岸工事に使う小石が積んであった。それは秋日の下で一種の強い匂いをたてていた。
梶井基次郎 / ある心の風景
温かく湿った空気、これを通してきらきらと濡れたような日の光
柳田 国男 / 雪国の春 amazon
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伊藤 整 / 青春 amazon
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朝日であるか、夕日であるか、私にはその香気でもって識別することができるのだ
太宰治 / 猿ヶ島 amazon
すこんと晴れて、緑が濃く光っていた。
吉本ばなな / サンクチュアリ「うたかた/サンクチュアリ」に収録 amazon
(朝日にさらされた犬の置物)光とほこりの 匂いの中で犬は、まるで雪景色の中にいるように清らかに見えた。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
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