生まれて初めて心の底から恐怖が這い上がってくる。黒々と光る地底の虫のような恐怖だった。彼らは目を持たず、憐みを持たなかった。そして鼠を彼らと同じ地の底にひきずり込もうとしていた。鼠は彼らのぬめりを体中に感じる。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置：75% 作品を確認（amazon）
この表現が分類されたカテゴリ
とても怖い
しおりに登録する
前後の文章を含んだ引用
......ワーに入る。そしてもう一本缶ビールを開け、もう一本煙草に火を点ける。 この街を出て何処に行けばいいのかもわからなかった。何処にも行き場所はないようにも思えた。 生まれて初めて心の底から恐怖が這い上がってくる。黒々と光る地底の虫のような恐怖だった。彼らは目を持たず、憐みを持たなかった。そして鼠を彼らと同じ地の底にひきずり込もうとしていた。鼠は彼らのぬめりを体中に感じる。缶ビールを開ける。 その三日ばかりのあいだに鼠の部屋はビールの空缶と煙草の吸殻でいっぱいになった。ひどく女に会いたかった。女の肌の温もりを全身に感じ、いつまでも......
単語の意味
鼠（ねずみ）
鼠・・・１．ネズミ科の哺乳動物の総称。人家の付近などに住む、敏捷な小動物。繁殖力が高く、食害や伝染病の原因となるため嫌われている。
２．鼠色（ねずみいろ）の略。
３．比喩として、こそこそと悪事を働く者、ひそかに害をなす者のたとえ。
２．鼠色（ねずみいろ）の略。
３．比喩として、こそこそと悪事を働く者、ひそかに害をなす者のたとえ。
ここに意味を表示
とても怖い気持ちの表現・描写・類語（恐怖・不安のカテゴリ）の一覧 ランダム５
窒息するくらいにおそろしくて
太宰治 / 人間失格
このカテゴリを全部見る
「形容詞」 ＋ 「恐怖」の表現・描写・類語（恐怖・不安のカテゴリ）の一覧 ランダム５
高い尖塔のてっぺんに上ったときに感じる恐怖のしびれ
村上春樹 / パン屋再襲撃「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
膀胱と排泄器官の辺りを沸騰した湯水が流れて行くような恐怖が彼の身内におとずれ
野間宏 / 崩解感覚「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
不安と恐怖にのたうち廻る思い
太宰治 / 人間失格
このカテゴリを全部見る
「心」の言葉を含む恐怖の表現・描写・類語（恐怖・不安のカテゴリ）の一覧 ランダム５
心に少しの憂いがあるときは、月の前を過ぎる薄雲ほどの微かな陰翳が美しい顔にかかる
中島 敦 / 悟浄出世 amazon
兎の眼のようにおじけづいた心配そうな眼
小島 信夫 / アメリカン・スクール amazon
このカテゴリを全部見る
恐怖・不安の比喩表現の例文 一覧 ランダム５
このカテゴリを全部見る
「恐怖・不安」カテゴリからランダム５
同じカテゴリの表現一覧
恐怖・不安 の表現の一覧
感情表現 大カテゴリ
