ラウンジの大きな窓からは初秋の雨が見えた。雨はあいかわらず音もなく降りつづき、その奥の方に街の光が様々なメッセージをにじませているのが見えた。ラウンジには客の姿は殆んどなく、湿っぽい沈黙があたりを支配していた。

（激しい雨で）窓ガラスが滝をながしたようになって、景色もなにも見えない。

（本降りの中、）一台の自動車が雨の糸をその強い光で銀色に照らしながら通り過ぎた。

野も丘も雨に煙っていた。風と音が来て、雨が幕を引くように、片側から風景を打ち消した。

丘と原は雨に煙っていた。雲がさがって、丘の頂の木を包み、突然吹く風に、低く遠く吹き散らかされた。その度に野を 蔽おおう雨の 条すじ に、 縞しま が移動した。

薄い霧だか 烟 だか港一杯に拡がって

雨音が、今新たに降り始めたかのように勢いを盛り返す

雨が未練がましくしょぼしょぼと降る

新芽のふくらみの先に、乳のように露を宿す

納豆の糸のような雨