藻草を纒ったような船夫達

船乗りは意気で勇ましくていいものだ。

無意識に美しいポーズをつくっているその船員の姿をじっと見ていた。

ある一軒の料亭で船乗りの宴会があった。少し酔って来るとみな料理が不味（まず）いと云い出した。苦笑した料理方が、次から出す料理には椀（わん）にも焼ものにも塩一つまみずつ投げ入れて出した。すると客はだいぶ美味（おい）しくなったといった。それほど船乗りの舌は鹹味（かんみ）に強くなっている。

船に乗りつけている人々はどんなに気取っても歩きつきで判るのである。畳の上ではそれほどでもないが、廊下のような板敷きへかかると船の傾きを踏み試めすような蛙股の癖が出て、踏み締め、踏み締め、身体の平定を衡（はか）って行くからである。

玄人はだし

今にも雪の降って来そうな空模様なのに、ベンチの浮浪人達は、朗かな鼾声（いびき）をあげて眠っている。

兵隊が、カアキ色の波のように群れ

（笑顔に隠れた金貸しの冷たい心）この笑いの後に半ば機械になった彼の硬い心がある。長い失敗の人生の後でなお頑強に人々に抵抗しようとしながら、身体に比して極めて小さい魂を金銭に摑まれた男の心、金銭への執着が 軋むような響きをたてる機械の心があるのである。そして、この小さい金銭の機械は学生の下宿に乗り込んで、辞書や衣類や時計やその大事な持物を抵当物件として取り上げる時、極度の疲労から古ぼけた埃をかぶった街工場のミーリングのような音を立てることがある。

中華料理のコックが思い切り息を吹き込んだペキンダックみたいに、みっともない格好