彼女がアパートを出ていってしまってから既に一ヵ月が経っていた。その一ヵ月には殆んど何の意味もなかった。ぼんやりとして実体のない、生温かいゼリーのような一ヵ月だった。何かが変ったとはまるで思えなかったし、実際のところ、何ひとつ変ってはいなかったのだ。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 ページ位置:6% 作品を確認(amazon)
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時間が止まったように虚しい日々
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......在しないのだ。 僕は灰皿を水につけてエアコンとラジオのスイッチを切り、もう一度彼女のスリップに思いを巡らしてから、あきらめてベッドに入った。 僕が離婚を承諾し、彼女がアパートを出ていってしまってから既に一ヵ月が経っていた。その一ヵ月には殆んど何の意味もなかった。ぼんやりとして実体のない、生温かいゼリーのような一ヵ月だった。何かが変ったとはまるで思えなかったし、実際のところ、何ひとつ変ってはいなかったのだ。 僕は朝七時に起きてコーヒーを淹れ、トーストを焼き、仕事にでかけ、外で夕食を取り、二杯か三杯酒を飲み、家に帰って一時間ばかりベッドの中で本を読み、電灯を消して眠......
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時間が止まったように虚しい日々の表現・描写・類語(寂しい・喪失感のカテゴリ)の一覧 ランダム5
二人のいる世界では、時が流れない。 橋本さんは川と小舟に譬えて話してくれた。川に浮かぶ小舟は、上流から下流へ、やがて海へと流されていく──それが、僕たちの生きている時間だ。橋本さんと健太くんの小舟は、五年前の事故で難破して、川の淀みに入ってしまった。海へ向かうことも、もちろん川をさかのぼることもできず、浮かぶでも沈むでもなく、ずっと同じ場所にある。
重松 清「流星ワゴン (講談社文庫)」に収録 amazon
じりじりと砂をかむような時間がゆく。
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
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何ヵ月も何年も、僕はただ一人深いプールの底に座りつづけていた。温かい水と柔らかな光、そして沈黙。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
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