耳に、入混った汽笛が届いた。汽笛の響は、真面目で、落着いて、七日の午後いきなり空に向って吹きつけたあの熱情を失っていた。
※備考※ 七日の午後は終戦を知らせ人々を歓喜させた汽笛である。
宮本百合子 / 伸子 ページ位置:9% 作品を確認(青空文庫)
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汽笛
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前後の文章を含んだ引用
......と云った。 十一日の早朝、まだ寝床にいるうち、伸子は父に起されて公式の休戦条約締結報告の汽笛を聞いた。白い靄のこもった寒い外気を顫わせて、彼女の眠いうっとりした耳に、入混った汽笛が届いた。汽笛の響は、真面目で、落着いて、七日の午後いきなり空に向って吹きつけたあの熱情を失っていた。伸子の心持も同じであった。感動の新鮮さの失われた実際的な心持で中途までを聞き、やまないうちにまたぐっすり寝こんでしまった。十三日には、休戦条約修正案が公表された......
単語の意味
汽笛(きてき)
熱情(ねつじょう)
汽笛・・・機関車や蒸気船などの、蒸気を吹き込んで音を出す笛。
熱情・・・感情が熱を持っている心理状態。ある目標や物事に向かって一生懸命真剣に向き合うさま。また、そういう気持ち。激しく高まった気持ち。情熱(じょうねつ)。
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汽笛の表現・描写・類語(音の響きのカテゴリ)の一覧 ランダム5
汽笛が、間を置いてヒュウ、ヒュウと聞えた。
小林多喜二 / 蟹工船
瀕死の野獣の悲鳴のような汽笛が聞こえる
高橋 和巳 / 捨子物語 amazon
遠ざかった上り列車から、また汽笛が微かに聞こえた
城山三郎 / 辛酸 amazon
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白浪が、遠近の距離感を外れて、ざーっざーっと鳴る
岡本かの子 / 金魚撩乱
響野が食器を並べる音が定期的に鳴っているだけだった。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
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飴でからめられたような車の群れ
鷺沢 萠 / 大統領のクリスマス・ツリー amazon
妻が使っていた自転車で、乗るとサドルが低かったが、調整するのもじれったく、立ったままペダルを漕げばいい、と走り出した。
伊坂 幸太郎 / アイネクライネナハトムジーク amazon
ただ小さな蒸気船が石油くさい波を立てながら右往左往しているきり
堀辰雄 / 旅の絵 amazon
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