さかんに頭を振り、目に浮かんだシーンを追い出そうとする

悪夢でも払うように首を振る

振り捨てようとすればするほど、この懐疑は執拗にとりついてきた。

父の言葉が彼の頭の中をちらと走り過ぎた。しかし彼は頭を左右に振ってこれらの言葉や姿を自分の心から振い落すようにしながら、親父の方に近寄って行った。

幻影は首を振ると消え、眼をつぶると 執拗 に 眼ま 蓋ぶた の裏に 纏まつわりついてくる。

趣味が高じてその方面の専門家になる

（夢から覚める）「勝手な想像はやめてください」 　叫んだとたんに眼を醒ました。

庭鳥（にわとり）のようにばたばたする

探偵小説的な策略

（頭蓋骨の内側には、）いったいどんな姿かたちをした意識が身を潜めているのだろう。それともそこにはもう何ひとつ残されていないのだろうか。見捨てられた家屋のように、家財や器具は残らず運び去られ、かつて住んでいた人々は気配も残さず消え失せてしまったのだろうか。しかしもしそうだとしても、その壁や天井には、時々の記憶や光景が焼き付けられているはずだ。長い時間によって培われたものは、それほどあっけなく無の中に吸い込まれたりはしない。父親はこの海辺の療養所の簡素なベッドに横たわりながら、同時に内奥にある空き屋のひっそりとした暗闇の中で、余人の目には映らない光景や記憶に囲まれているのかもしれない。