橋の上から見ると、滑川 の水は軽く薄濁って、まだ芽を吹かない両岸の枯れ葦 の根を静かに洗いながら音も立てずに流れていた。それが向こうに行くと吸い込まれたように砂の盛 れ上がった後ろに隠れて、またその先に光って現われて、穏やかなリズムを立てて寄せ返す海べの波の中に溶けこむように注いでいた。
有島武郎 / 或る女(後編) ページ位置:56% 作品を確認(青空文庫)
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川
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前後の文章を含んだ引用
......のないその橋の上まで来てしまった。 橋の手前の小さな掛け茶屋には主人の婆 さんが葭 で囲った薄暗い小部屋 の中で、こそこそと店をたたむしたくでもしているだけだった。 橋の上から見ると、滑川 の水は軽く薄濁って、まだ芽を吹かない両岸の枯れ葦 の根を静かに洗いながら音も立てずに流れていた。それが向こうに行くと吸い込まれたように砂の盛 れ上がった後ろに隠れて、またその先に光って現われて、穏やかなリズムを立てて寄せ返す海べの波の中に溶けこむように注いでいた。 ふと葉子は目の下の枯れ葦 の中に動くものがあるのに気が付いて見ると、大きな麦桿 の海水帽をかぶって、杭 に腰かけて、釣 り竿 を握った男が、帽子の庇 の下から目を光らして......
単語の意味
葦・蘆・葭(あし)
砂(すな)
葦・蘆・葭・・・水辺に生える草の一種。沼や川の岸に群がって生える。若芽は食用になり、茎は編んですだれを作る。
砂・・・岩石が細かくなったもの。岩が徹底的に砕かれたもので有機物が含まれていない。そのため、土(有機物が含まれる)と違って、植物は育ちにくい。砂場や砂漠に雑草が生えにくいのもこのため。
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すぐ足もとを土手をかみながら流れ去る水の速さは、見ていると吸いこまれそう
飯田 栄彦 / 昔、そこに森があった amazon
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底のほうで鳴っているような重い海の響き
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