その評論家が他人のふんどしで相撲をとるどころか、他人の皮をかぶって、他人の舌で喋りまくってるような気がしたんだ。

評論家の多くは作家になりそこねた者である。

カフエーに勤めるようになると、男に抱いていたイリュウジョンが夢のように消えてしまって、皆一山いくらに品がさがってみえる。

小さなピンセットでまるで粟粒（あわつぶ）ぐらいの活字（かつじ）を次（つぎ）から次（つぎ）へと拾（ひろ）い

（指圧師の）指から旭の光りの放たれるような幻想を持つ

（詩人）詩人は共喰いの共産党だ。持ってるものは平等につかう。借金もそれ相当なもの。手近な目的はただ食べる事に追われるばっかり。人命終熄（しゅうそく）の一歩手前でうろうろしているばかりなり。天才は一人もいない。自分だけが天才と思っているからよ。それ故、私たちはダダイスト。只何となく感じやすく、激しやすく、信念を口にしやすい。何もないくせに、まずここんところから出発してゆくより仕方がない。

人の情というものが全く欠けているほどの、世にもまれな悪人