単に鼻のみではない、顔全体が低い。小供の時分喧嘩をして、餓鬼大将 のために頸筋 を捉 まえられて、うんと精一杯に土塀 へ圧 し付けられた時の顔が四十年後の今日 まで、因果 をなしておりはせぬかと怪 まるるくらい平坦な顔である。至極 穏かで危険のない顔には相違ないが、何となく変化に乏しい。いくら怒 っても平 かな顔である。
夏目漱石 / 吾輩は猫である ページ位置:27% 作品を確認(青空文庫)
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平たい顔・薄い顔
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前後の文章を含んだ引用
......鼻子夫人が顔を洗うたんびに念を入れて鼻だけ拭く事や、富子令嬢が阿倍川餅 を無暗 に召し上がらるる事や、それから金田君自身が――金田君は妻君に似合わず鼻の低い男である。単に鼻のみではない、顔全体が低い。小供の時分喧嘩をして、餓鬼大将 のために頸筋 を捉 まえられて、うんと精一杯に土塀 へ圧 し付けられた時の顔が四十年後の今日 まで、因果 をなしておりはせぬかと怪 まるるくらい平坦な顔である。至極 穏かで危険のない顔には相違ないが、何となく変化に乏しい。いくら怒 っても平 かな顔である。――その金田君が鮪 の刺身 を食って自分で自分の禿頭 をぴちゃぴちゃ叩 く事や、それから顔が低いばかりでなく背が低いので、無暗に高い帽子と高い下駄を穿 く事や、それを車夫......
単語の意味
至極(しごく)
首筋・頸筋(くびすじ)
至極・・・これ以上ないほど最高。極限なこと。
首筋・頸筋・・・首の両側から後部にわたる部分。首の後ろ側の部分。項(うなじ)。襟首(えりくび)。首根っ子・頸根っ子(くびねっこ)。
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平たい顔・薄い顔の表現・描写・類語(顔のカテゴリ)の一覧 ランダム5
私の顔は、ほどほどに平凡である。祖父ゆずりの丸い鼻は低く、祖母ゆずりの唇はよく見ると厚いが、肌の白さも手伝って全体的にはのっぺりとした印象で、自分でも鏡を見ながら、葉書のようだなあと思うことがある。その上、右目は二重で左目が三重という具合に、統一感もない。《…略…》結婚して化粧をする機会が減った今は、ますます葉書感が増してきた気もする。
本谷 有希子 / 異類婚姻譚 amazon
横顔を向けて客と相対しているから例の平坦な部分は半分かくれて見えぬが、その代り鼻の在所 が判然しない。
夏目漱石 / 吾輩は猫である
夏目漱石 / 吾輩は猫である
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仄(ほの)明るさが顔を静物のように彫る
徳永 直 / 太陽のない街 amazon
白い磁器のように美しい淑(しと)やかさに占められている顔
円地 文子 / 渦 amazon
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