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暖かい東南風が一吹き強く頬 に感ずると、かの女は、新橋際まで行ってそこから車に乗り、早く家へ帰り度 いというさっきからの気持は、人ごとのように縁の遠いものとなり、くるりと京橋の方へ向き直り、風の流れに送られて、群衆の方向に逆いながらまたそろそろ歩き出した。 思考力をすっかり内部へ追い込んでしまったあとの、放漫なかの女の皮膚は、単純に反射的になっていて、湿気 た風を真向きに顔へ当てることを嫌う理由だけでも、かの女にこんな動き方をさせた。
岡本かの子 / 母子叙情 ページ位置:41% 作品を確認(青空文庫)
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心変わり・熱が冷める
風を受ける
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前後の文章を含んだ引用
......た。「藻掻 いてもしようがない。随 いて行くまでだ」都会人に取って人混は運命のような支配力を持っていた。薄靄 を生海苔 のように町の空に引き伸して高い星を明滅させている暖かい東南風が一吹き強く頬 に感ずると、かの女は、新橋際まで行ってそこから車に乗り、早く家へ帰り度 いというさっきからの気持は、人ごとのように縁の遠いものとなり、くるりと京橋の方へ向き直り、風の流れに送られて、群衆の方向に逆いながらまたそろそろ歩き出した。 思考力をすっかり内部へ追い込んでしまったあとの、放漫なかの女の皮膚は、単純に反射的になっていて、湿気 た風を真向きに顔へ当てることを嫌う理由だけでも、かの女にこんな動き方をさせた。 本能そのもののようにデリケートで、しかし根強い力で動くかの女の無批判な行動を、逸作はふだんから好奇の眼で眺め、なるべく妨げないようにしていた。それで、かの女の......
単語の意味
頬(ほお・ほほ)
頬・・・顔の一部。顔の両脇で、口の真横にあるやわらかい部分。ほっぺ。ほっぺた。
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信じる心は、デパートの正札のように、一夜でつけ替えられるものではないのだ。
岩田 豊雄 / 沙羅乙女「獅子文六作品集〈第4巻〉沙羅乙女・信子 (1958年)」に収録 amazon
手を翻 せば雨、手を覆 せば雲
夏目漱石 / 吾輩は猫である
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夜風の吹き渡る往来は多少胃の痛みの薄らいだ僕の神経を丈夫にした。
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子供の落書きのような空想
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考えれば考えるほどわけがわからなくなる。自分の脳味噌が消費期限切れの豆腐でできているみたいに思えてくる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 3 amazon
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灰色のしみが雨雲のようにべったりはりつく
大原 まり子 / イル&クラムジー物語 amazon
(追っていた事件の真相が思いがけなくて、)頭の中に記憶された世界中の物事や事象が一瞬にしてばらばらにほどけてしまったような気がした。すべてが細やかな断片として砕け、飛び散っていった。《…略…》この何ヶ月の間に僕の中に漠然と形成されていたある種の体制をばらばらに吹き飛ばしてしまったのだ。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
(スケッチブックは)始終持ち歩いていたせいで、緑色の表紙は、角が白く潰れてしまっている。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
純朴な住民たちのおだやかな明け暮れと、死に向う若者たちを乗せて空に飛立つ戦闘機の轟音とが、どうしても一つに溶け合ってこない
池波 正太郎「食卓の情景 (新潮文庫)」に収録 amazon
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