歩行者用信号が青になるのを待つ。車道を眺める。槿(人名)にはそれが川に思える。視界が狭くなり、光景の彩度が落ち、車道の上を、不定形の波を隆起させ、川が、右から左へとゆるゆる流れていく。歩道との境に設置されたガードレールは、その、緩やかに、たゆたう川が、道を逸れぬように、川べりから溢れぬように、と付きっ切りで見守る役割を果たしている。 川は、時に嵐に勢いを増すとはいえ、それ以外の時には、目立つとも目立たぬともいえぬ水面の揺れとせせらぎをたてる程度だ。
伊坂 幸太郎 / マリアビートル ページ位置:72% 作品を確認(amazon)
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舗道・アスファルト
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前後の文章を含んだ引用
......出しておいて、いったいどういうことか。憤りは感じなかった。が、途方に暮れた。帰ってしまおうか、と考えるが気にもなる。気づけば、県道を渡り、建物に向かっていた。 歩行者用信号が青になるのを待つ。車道を眺める。槿にはそれが川に思える。視界が狭くなり、光景の彩度が落ち、車道の上を、不定形の波を隆起させ、川が、右から左へとゆるゆる流れていく。歩道との境に設置されたガードレールは、その、緩やかに、たゆたう川が、道を逸れぬように、川べりから溢れぬように、と付きっ切りで見守る役割を果たしている。 川は、時に嵐に勢いを増すとはいえ、それ以外の時には、目立つとも目立たぬともいえぬ水面の揺れとせせらぎをたてる程度だ。 視界が戻る。川は消え、車道が現れる。景色のあざやかさが増し、色をつける。 横の植え込みに、交通安全の旗を入れる、アルミ製の筒が取り付けられていた。 それから、......
単語の意味
細流(せせらぎ)
揺蕩う・猶予う(たゆたう)
光景(こうけい)
細流・・・細(ささ)やかに流れる水の音。海や川の浅い場所を流れる水の音。さらさらと流れる水の音。また、その流れ。
揺蕩う・猶予う・・・1.ゆらゆらと漂っている。止まらずにずっと揺れ動いている。
2.心があれこれと迷う。気持ちを決めかねる。
2.心があれこれと迷う。気持ちを決めかねる。
光景・・・1.目に前に広がる景色。そこに見える景色や物事のありさま。景色。様子。
2.日の光。
2.日の光。
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(舗道に捨てられたちらし)汚い鋪道 の上に、散しの黄や赤が、露にベトベト濡れて陽に光っていた。
林芙美子 / 新版 放浪記
舗道が昼の緩んだ暑さを残して温かく、汗ばむように湿る
長野 まゆみ / 銀木犀 amazon
曲がりくねった金属のチューブに見える道路
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
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青ぞらの映った雪解けの道
芥川竜之介 / 歯車
車が円錐形(の山)の上に近づくにつれて右手のスロープは険しい岩山へと姿を変え、やがて垂直な岩の壁に変った。そして我々はのっぺりとした巨大な壁に刻まれた狭いはりだしに辛うじてしがみついているような格好になった。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
街道の傍から渓に懸った吊橋 を渡って入ってゆく山径
梶井基次郎 / 筧の話
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