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私の眼はひとりでに下へ落ちた。径の傍らには種々の実生みしょう蘚苔せんたい羊歯しだの類がはえていた。この径ではそういった矮小わいしょうな自然がなんとなく親しく――彼らが陰湿な会話をはじめるお伽噺とぎばなしのなかでのように、眺められた。
梶井基次郎 / 筧の話 ページ位置:15% 作品を確認(青空文庫)
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山道・峠道
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......へ入ってゆく。杉のこずえが日をさえぎり、この径にはいつも冷たい湿っぽさがあった。ゴチック建築のなかを辿たどってゆくときのような、ひしひしと迫って来る静寂と孤独とが感じられた。私の眼はひとりでに下へ落ちた。径の傍らには種々の実生みしょう蘚苔せんたい羊歯しだの類がはえていた。この径ではそういった矮小わいしょうな自然がなんとなく親しく――彼らが陰湿な会話をはじめるお伽噺とぎばなしのなかでのように、眺められた。また径の縁には赤土の露出が雨滴にたたかれて、ちょうど風化作用に骨立った岩石そっくりの恰好になっているところがあった。その削り立った峰のいただきにはみな一つ宛小石が載っ......
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類・類い(たぐい)
羊歯・歯朶(しだ)
類・類い・・・同じ程度のもの。同じ種類のもの。同類。同種。比(比い)とも書く。
羊歯・歯朶・・・植物の一種。花は咲かず、コケや菌類と同じく胞子で増える。根から直接葉を出すものが多い。「羊歯」は「ようし」とも読む。
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