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当時は東京でも、夜の闇が灯火を圧倒していた。なればこそ、灯火が美しかったのであるが、いまは灯火に夜の闇がはね退けられ、昼夜の区別がなくなってしまったから、夕靄も夜霧も、何処かへ逃げてしまった。
池波 正太郎「食卓の情景 (新潮文庫)」に収録 ページ位置:35% 作品を確認(amazon)
この表現が分類されたカテゴリ
街灯・外のあかり
夜
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前後の文章を含んだ引用
......いるような感じがしたものだ。もちろん戦前のことで、はじめての静岡駅頭のしずけさ、暗さというものは、現代のそれとくらべて想像もつかぬほどといってよい。 もっとも、当時は東京でも、夜の闇が灯火を圧倒していた。なればこそ、灯火が美しかったのであるが、いまは灯火に夜の闇がはね退けられ、昼夜の区別がなくなってしまったから、夕靄も夜霧も、何処かへ逃げてしまった。 その夜は静岡市へ一泊。 翌日。昼前に車で、東海道・丸子の宿へ出かけた。 いまから約三十年前の当時は、街道の風趣も色濃く残っていたようにおもわれる。そのころの私......
単語の意味
圧倒(あっとう)
夕靄(ゆうもや)
圧倒・・・ひときわ優れた力を持っていること。他よりとても勝っていること。また、その力で相手を押さえつけること。
夕靄・・・夕方に辺りを覆う靄(もや)。
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街灯・外のあかりの表現・描写・類語(光と影のカテゴリ)の一覧 ランダム5
人魂のように街の灯が、港の水に映っていた。
葉山 嘉樹 / 海に生くる人々 amazon
青白い光を点々と並べる街灯の列
黒井 千次 / 群棲 amazon
蜘蛛 の 巣 だらけの電球が道を見下していた。
志賀 直哉 / 雨蛙「城の崎にて・小僧の神様 (角川文庫)」に収録 amazon
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夜の表現・描写・類語(時間帯(朝・昼・夜)のカテゴリ)の一覧 ランダム5
夜になると光がなくなる。 この街は、驚くほど従順に、夜に飲み込まれていく。街灯も住宅から漏れる光もまばらだ。田舎の夜と違って、動物や植物の強い息遣いがすることもない、清潔な暗闇が、街を覆う。 私たちは白い世界と黒い世界を行ったり来たりしながら毎日を過ごしていた。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
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「光と影」カテゴリからランダム5
髪を振り乱した、頬骨の出ている女の顔は、遠い街燈の光を斜めに受けて、妖怪じみて見える。
椎名 麟三 / 永遠なる序章 amazon
部屋の隅から、ゆっくり夕闇が流れ込んでいた。台所の食卓に置いたパウンドケーキの箱が、薄い闇の中に沈んでいた。
小川 洋子 / ドミトリイ「妊娠カレンダー (文春文庫)」に収録 amazon
「外の設備・工作物」カテゴリからランダム5
ビュルルーと砲弾の飛ぶ音が聞え、
昇平, 大岡「野火(のび) (新潮文庫)」に収録 amazon
微かなタッチのあと延び広がるように長く続く鐘の音
滝口 悠生 / 死んでいない者 amazon
「時間帯(朝・昼・夜)」カテゴリからランダム5
恐ろしい夕焼けを見た。 一生、忘れない。 あの日の円盤に匹敵するすごさだった。心動かされた。生きていたのだ。 時間は生き物だ。 何の気なしに私たちは街中を歩いていた。南国のように透明で乾いた陽ざしが、オレンジを帯びつつあった。赤い空に、暗い町並みは影絵のように浮かびあがっていた。 しかしそれはほんの序曲だった。 私たちは普段、東京で夕空を見るとき「あっちの、はるか遠いほうで、何かきれいなことをやっているな」と思う。 TVの画面を見るように、パンフレットの絵画を見るように。 でも、それから数分間の間に見たことは全然違った。 手で触れるかと思った。 透明で、赤く柔らかで、巨大なエネルギーが、町や空気の目に見えない壁を通りぬけて押してくるような迫力だった。息苦しいほどの、生々しさだった。 一日は一日を終えるとき、何か大きくて 懐かしくて怖いほど美しいことをいちいち見せてから舞台を去っていくのだ、と思い知った。実感した。 町に、自分にしみ込んでくる。なめらかに溶けて、したたり落ちる。 そういう赤が刻々と色を変え、オーロラのように展開していく。 もっとも美しく透きとおったロゼのワインや、愛妻の頰の赤、そういったもののエッセンスが、西のほうからめくるめくスピードでぜいたくに迫ってきた。 路地のひとつひとつが、ひとりひとりの人の顔が。赤く照らされては満たされていく、激しい夕焼けだった。
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
月影が空にはりつくような夜明け
吉本 ばなな / ムーンライト・シャドウ「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
部屋の中は夕陽で 緋色 に染められていた。空気は動いていない。潮風は暮れて行く太陽の光だけを移動させていた。
山田詠美「新装版 ハーレムワールド (講談社文庫)」に収録 amazon
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