鴉が何羽となく輪を描いて、高い鴟尾 のまわりを啼きながら、飛びまわっている。ことに門の上の空が、夕焼けであかくなる時には、それが胡麻 をまいたようにはっきり見えた。
芥川龍之介 / 羅生門 ページ位置:9% 作品を確認(青空文庫)
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烏(カラス)
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前後の文章を含んだ引用
......なくなると、誰でも気味を悪るがって、この門の近所へは足ぶみをしない事になってしまったのである。 その代りまた鴉 がどこからか、たくさん集って来た。昼間見ると、その鴉が何羽となく輪を描いて、高い鴟尾 のまわりを啼きながら、飛びまわっている。ことに門の上の空が、夕焼けであかくなる時には、それが胡麻 をまいたようにはっきり見えた。鴉は、勿論、門の上にある死人の肉を、啄 みに来るのである。――もっとも今日は、刻限 が遅いせいか、一羽も見えない。ただ、所々、崩れかかった、そうしてその崩れ目に長い......
単語の意味
夕焼け(ゆうやけ)
上の空(うわのそら)
鴉・烏(からす)
夕焼け・・・大陽が沈む時、西の空が赤く染まったように見えること。太陽の光が、昼間より長い距離、空中を通って来るため、波長の短い青色の光は散乱し、波長の長い赤色や黄色の光だけが、地上に到達することで起こる現象。
鴉・烏・・・カラス科カラス属およびそれに近縁の鳥の総称。人家近くの森に住む、雑食性の利口な鳥。雌雄ともに全身、光沢のある黒。日本では主に嘴太烏(ハシブトガラス)と嘴細烏(ハシボソガラス)の2種。古来より人との関わりが深く、熊野の神の使いとして知られ、また、その姿や鳴き声は不吉の象徴とされるなど、信仰や迷信が多い。
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烏(カラス)の表現・描写・類語(鳥類のカテゴリ)の一覧 ランダム5
欄干にとまった鴉たちは前衛劇に出てくる傍観者のように見えた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
干潟のほの白い砂の上に、黒豆を零したようなのは、烏の群が下りているのであろうか。
鈴木 三重吉 / 千鳥 amazon
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「鳥類」カテゴリからランダム5
天使の羽根が大学の中庭に降りてくる光景を想像してみたが、遠くから見るとそれはまるでティッシュ・ペーパーのように見えた。
村上春樹「風の歌を聴け (講談社文庫)」に収録 amazon
急激な嵐の消滅のように小鳥たちの声がやむ
大江 健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
むくどりの一群が芝生の上を気紛れな流砂のように右から左へと移動していた。
村上 春樹「羊をめぐる冒険」に収録 amazon
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