（活動写真）最初「実写」だった。宮城、松島、江ノ島、京都……が、ガタピシャガタピシャと写って行った。時々切れた。急に写真が二、三枚ダブって、目まいでもしたように入り乱れたかと思うと、瞬間消えて、パッと白い幕になった。 　それから西洋物と日本物をやった。どれも写真はキズが入っていて、ひどく「雨が降った」それに所々切れているのを接合させたらしく、人の動きがギクシャクした。

ボクシングを映し出す画面は大きく、飛び散る汗がこちらにかかるような錯覚を受けるほど、臨場感がある。

すりガラス越しにテレビの画像が揺れている

画面奥からの強い光源

ＴＶはまるで友達のように思えるけれど、実は壁と大差ない、なぜならもし強盗が入ってきて部屋の主が殺されても、ＴＶは何事もなく映り続けるから

（ライブ会場のステージから客席を見る）天から星空を見下ろしているような気持ちになる。サイリウムの光は、まるでいきもののように、ひとつひとつが別の動きをする。

森に囲まれた音楽堂からは木の葉を震わす大音響でロックが聞こえてくる

ステージはまるで積み木の見本みたいに様々なアンプやスピーカーが並んでいる

カラフルな安っぽい照明がチカチカと舞台を照らす

（武道館でのライブ）たったひとりの彼女が何か言うたび一万人以上分の声が一斉に波打つその様子は、まるで、薄皮一枚で包まれている宇宙を指でつっついている神様のようだ。

依然として予測のつかない時代ではあったが、武内は、復興をめざして日本の大地から 湧き起こっている 渦巻くようなエネルギーが、確かに自分の体からも燃えたぎってくる思いに駆られた。

終戦間もないころで、核家族などという言葉もなければ、テレビもなく、電気洗濯機の普及にも遠かった時代である。

戦後の、日本にとっては未曾有の食糧危機は数年つづき、海軍にいたころ、六十キロあった私の体重は四十二キロに減じてしまった。

終戦直後の物資欠乏時代

（終戦間もなくは）われわれの娯楽といえば、芝居と映画だけの時代だったのである。食べものすら充分でなかった。

悪くない映画だったが途中で何度も考え事をしたので映画の筋がずたずたに分断されてしまった。《…略…》映画のエンドマークが出ると、僕は殆んど筋のわからないまま席を立って外に出た。

（ロックライブ）巨大なスピーカーからの音はステージで動いている連中とは関係ないように聞こえる。この地面の上に初めから音があって、それに合わせて化粧した猿が踊っているように見える。

ＴＶはまるで友達のように思えるけれど、実は壁と大差ない、なぜならもし強盗が入ってきて部屋の主が殺されても、ＴＶは何事もなく映り続けるから

命が物のように扱われる映画

ステージはまるで積み木の見本みたいに様々なアンプやスピーカーが並んでいる

戦前の銀座の匂いは、まさにバターと香水の匂いがしていた。そのモダンな香りに井上も私も酔い痴れていたといってよい。

往々にしてひょいとしたきっかけから始まる政治変革

現在というのは過去の集積によって形作られている

戦後の、日本にとっては未曾有の食糧危機は数年つづき、海軍にいたころ、六十キロあった私の体重は四十二キロに減じてしまった。

時世の移り変わり