時計の秒針がゆっくり動いていく。

砂時計が無慈悲に滴り落ちていく

そこでは時間がおだやかな風のように流れていた。

時間が重い鎖をひきずるようにして通過する

油のような時間が流れる

真由は夢のようにゆっくりとステージを見上げた。 　今まで彼女が出たどの映画よりも上手な角度で。

進取の気性が時代の歩調としっかり手を取り合う

（電話の時報）時報を聞くのが僕は好きだった。そこはどこまでも果てしのない、何ものにも乱される恐れのない、安定した世界だった。たとえ僕がクシャミをしても、お姉さんは迷惑そうな様子さえ見せず、ひたすら時刻を知らせ続ける。一秒ごとに刻まれる歯車の船の 舳先 に立ち、次々と誕生する新たな時刻を、まっさらな海面に向かって宣告する。大変な重労働だと思われるのに、口調は滑らかだ。

腰にさした扇をぬいて、その黒柿（くろがき）の骨を、一つずつ指で送ったり、もどしたりしながら

目を閉じるといろいろな音が聞こえてきた。博士のいびき、毛布の衣擦れ、氷の溶ける気配、ルートの寝言、ソファーの軋み。二人の発する音たちは、発熱のアクシデントを忘れさせ、私を安堵させ、眠りに導いてくれた。