腹の底に、欠伸の素が粉にでもなってふわふわ舞っているように、生暖かい欠伸が出て、止まらない

重たい 欠伸

生あくびが泡みたいに胃の奥から上がってくる

挙がった歓声を全部呑みこむほど大きな欠伸

可愛らしい口を開（あ）いて欠伸（あくび）をした。

深呼吸すると冷たい空気が喉につかえた。

壁にもたれて彼はふかい溜息をついた。

なるほどな。もう一度、深呼吸とともに思う。なるほどな。吐き出す息が、ため息の重さになる。

鼻の先へあてがう

心臓の調子を整えるため、時間をかけてゆっくり深呼吸をする

湿っぽい

欲しいと思ったものは何でも必ず手に入れてきた。でも、何かを手に入れるたびに別の何かを踏みつけてきた。《…略…》そしてこう思った。もう何も欲しがるまいってね」 　彼女は首を振った。「それで、一生そんな風にやってくつもり？」 「おそらくね。誰にも迷惑をかけずに済む」 「本当にそう思うんなら」と彼女は言った。「靴箱の中で生きればいいわ」 　素敵な意見だった。

興醒（きょうざ）めた悲しい気持

（熱情が冷める）弾力を失ったゴム糸のように間抜けてゆるく、二人の間は段々と延びて行くように感じられた。

十代の後半をこの男とともにすごした思い出はあったが、だからと言って愛情のようなものはなかった。同じ通勤電車で何年も顔を合わせているサラリーマンの人生が、自分に関わってこないのと似ていた。