葉子の心の目には、倉地の肉体のすべての部分は触れる事ができると思うほど具体的に想像された。葉子は自分で造り出した不思議な迷宮の中にあって、意識のしびれきるような陶酔にひたった。
有島武郎 / 或る女(後編) ページ位置:92% 作品を確認(青空文庫)
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自慰
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前後の文章を含んだ引用
......しと祈るような瞬間を持った。 日はたつけれども倉地からはほんとうになんの消息もなかった。病的に感覚の興奮した葉子は、時々肉体的に倉地を慕う衝動に駆り立てられた。葉子の心の目には、倉地の肉体のすべての部分は触れる事ができると思うほど具体的に想像された。葉子は自分で造り出した不思議な迷宮の中にあって、意識のしびれきるような陶酔にひたった。しかしその酔いがさめたあとの苦痛は、精神の疲弊と一緒に働いて、葉子を半死半生の堺 に打ちのめした。葉子は自分の妄想 に嘔吐 を催しながら、倉地といわずすべての男を呪 い......
単語の意味
陶酔(とうすい)
肉体(にくたい)
心の目(こころのめ)
陶酔・・・気持ちよく酔うこと。心を奪われてうっとりと気持ちのいいこと。
肉体・・・肉から構成されている体。生きている人間の体。生身の体。
心の目・・・物事の真実の姿をはっきりと見分ける鋭い心の働きを、目に見立てた言葉。心眼(しんがん・しんげん)。
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自慰の表現・描写・類語(腰・尻・性器のカテゴリ)の一覧 ランダム5
折りとった青い草の茎のようにじゅくじゅくと自瀆(じとく)で性器を濡らす哀れなおれ
大江 健三郎 / セヴンティーン「性的人間 (新潮文庫)」に収録 amazon
自慰が子どもの遊びだと知ったのは、初めて性交したときではなく、自慰を特にしたくなくなったとき。徐々に失われてゆく興味に、私はおばあさんになってまでこの行為を続けたいとは思わないだろうと予測がついた。不思議だ子どものころは自慰ほど大人びた背徳的な行為はなかった。丸めた背中も痙攣的な指の動きも決して早めに飛び越えてはいけない柵だったが私はかるがると幼稚園児のときから飛び越えていた。
綿矢 りさ / 仲良くしようか「勝手にふるえてろ (文春文庫)」に収録 amazon
私は部屋に行き、シーツの中に潜った。 疼きのような熱の塊は、尾てい骨と恥骨の間の空間に宿っているみたいだった。私はそこへ向かう柔らかい穴を、下着の上から指でたどった。《…略…》下着の上からも、そこがとても柔らかいということがわかった。他の皮膚とは違う柔らかさは、内臓と同じ物質でできているように思えた。 私はその奥の疼きを引き出すように、柔らかい穴を下着の上から指でたどりつづけた。中には怖くて指を入れられなかった。疼きのほうが、まるで外へ出たいというかのように、柔らかい穴の奥で少しずつ膨れていった。《…略…》下着の隙間から直接柔らかい皮膚に触れると、そこは少し水けを帯びているみたいだった。《…略…》爪先からぴりっと、小さな、光の粒でできた雷のようなものが走って、脚の間からその光の粒子がゆっくりと抜けて行った。《…略…》欲望を演奏することによって身体から抜けて行った疼きの塊は、どこにもなくなっていて、膝と性器に、微かな脱力感が残った。身体の中を渦巻いていた音楽はやっと演奏されておさまったみたいだった。
村田 沙耶香「しろいろの街の、その骨の体温の」に収録 amazon
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「腰・尻・性器」カテゴリからランダム5
勃起してアスパラガスの茎のよう
大江健三郎 / 芽むしり仔撃ち amazon
布団の中で硬くなった性器は、横顔に当たる赤外線ストーブの熱と同じくらいに熱い。
吉田修一「悪人」に収録 amazon
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