(悲しい音楽を聴いて悲しみに浸る)その静かなメランコリックな曲は、彼の心を包んでいる不定型な哀しみに、少しずつ輪郭を賦与していくことになる。まるで空中に潜む透明な生き物の表面に、無数の細かい花粉が付着し、その全体の形状が眼前に静かに浮かび上がっていくみたいに。
村上 春樹 / 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 ページ位置:65% 作品を確認(amazon)
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......の曲から聴き始め、第二年「イタリア」の四曲目『ペトラルカのソネット第四七番』まで聴く。そこでレコードの面が終わり、針が自動的に上がる。『ル・マル・デュ・ペイ』。その静かなメランコリックな曲は、彼の心を包んでいる不定型な哀しみに、少しずつ輪郭を賦与していくことになる。まるで空中に潜む透明な生き物の表面に、無数の細かい花粉が付着し、その全体の形状が眼前に静かに浮かび上がっていくみたいに。今回のそれはやがて沙羅のかたちをとっていた。ミントグリーンの半袖ワンピースを着た沙羅。 胸の疼きが再び蘇ってきた。激しい痛みではない。あくまで激しい痛みの記憶だ......
単語の意味
眼前(がんぜん)
眼前・・・目の前。その人が見ているすぐ目のところ。目前(もくぜん)。
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クリスマス・ソングのテープはそこで終わり、かたんという音ともに沈黙がやってきた
村上春樹 / 回転木馬のデッド・ヒート(タクシーに乗った男) amazon
妹はフリオ・イグレシアスのレコードをかけた。 フリオ・イグレシアス! と僕は思った。やれやれ、どうしてそんなモグラの糞みたいなものがうちにあるんだ?
村上春樹 / ファミリー・アフェア「パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
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「音の響き」カテゴリからランダム5
生まれた家では、夜おそくよく汽笛が響いてきた。天井板のこみいった木目に怯えて、寝付かれない子どもの耳に、それが騒音というにはあまりにもか細い、なにか優しい未知の華やかさのように聞こえてきた。ちょうどそれは、おもいがけない遠くでさざめいている都の夜のようなものである。
三島由紀夫 / 花ざかりの森 amazon
植え込みが臆病な動物の群れのようにざわめく
宮部 みゆき / 我らが隣人の犯罪 amazon
耳を 聾する音響が響き渡った。
翔田 寛「真犯人 (小学館文庫)」に収録 amazon
遠雷のような汐鳴 りの音
林芙美子 / 新版 放浪記
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