やっと字を読み書きできる明るさ

やさしいかすかな音楽のような光

貧弱なほの暗い光

稜（かど）から霧（きり）のような青白い光を出す鋼玉

直射のない煙ったような明るさ

暗い洞窟のような重症病室

電灯が尾を引くようにすうっと消える

ぱっと、店内の電燈がついた。大理石のテーブルや、鏡をはめこんだ柱が、俄に夜の銀座らしく輝き出した。

坂（さか）の下に大きな一つの街燈（がいとう）が、青白く立派（りっぱ）に光って立っていました。ジョバンニが、どんどん電燈（でんとう）の方へおりて行きますと、いままでばけもののように、長くぼんやり、うしろへ引いていたジョバンニの影（かげ）ぼうしは、だんだん濃（こ）く黒くはっきりなって、足をあげたり手を振（ふ）ったり、ジョバンニの横（よこ）の方へまわって来るのでした。

燃え上がり燃えかすれるその光は、幾百人の漁夫たちの命を勝手に支配する運命の手だ。