車全体が唸 る生きものになって、広いアスファルトの道は面前に逆立ち、今まで眼にとまっていた榕樹の中の草葺 きの家も、椰子林 の中の足高の小屋も、樹を切り倒している馬来人 の一群も、総て緑の奔流に取り込められ、その飛沫 のように風が皮膚に痛い。大きな歯朶 や密竹で装われている丘がいくつか車の前に現れ、後に弾んで飛んで行く。マークの付いている石油タンクが乱れた列をなして、その後にじりじりと展転して行く。
岡本かの子 / 河明り ページ位置:61% 作品を確認(青空文庫)
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車窓からの風景
車が走る
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前後の文章を含んだ引用
......たちに 「いらっしゃい。鰐 ぐらいは見られます」 と気軽に云った。 車は町を出て、ジョホール街道を疾駆して行った。速力計の針が六十五哩 と七十哩の間をちらちらすると、車全体が唸 る生きものになって、広いアスファルトの道は面前に逆立ち、今まで眼にとまっていた榕樹の中の草葺 きの家も、椰子林 の中の足高の小屋も、樹を切り倒している馬来人 の一群も、総て緑の奔流に取り込められ、その飛沫 のように風が皮膚に痛い。大きな歯朶 や密竹で装われている丘がいくつか車の前に現れ、後に弾んで飛んで行く。マークの付いている石油タンクが乱れた列をなして、その後にじりじりと展転して行く。 「イギリス海軍用のタンク」 水が見える。綺麗 な可愛 らしい市が見える。ジョホール海峡の陸橋を渡って、見えていた市の中を通って、なおしばらく水辺に沿って行った処で若......
単語の意味
奔流(ほんりゅう)
羊歯・歯朶(しだ)
榕樹(ようじゅ)
足高・脚高(あしだか)
偽装・擬装(ぎそう)
奔流・・・勢いのある流れ。激しく力づよい流れ。急流。奔湍(ほんたん)。
羊歯・歯朶・・・植物の一種。花は咲かず、コケや菌類と同じく胞子で増える。根から直接葉を出すものが多い。「羊歯」は「ようし」とも読む。
榕樹・・・ガジュマル(熱帯地方に分布するクワ科の常緑高木)の別名。
足高・脚高・・・足の高さがあること。足が長いこと。また、足が長く見えるさま。
偽装・擬装・・・1.偽(いつ)り装(よそ)うこと。ある事実をおおい隠すための、装いや行動。他人の目をごまかすため、他の物事や状況を装うこと。
2.周囲の風景や他の物とよく似た色や形にして、姿を見分けにくくすること。カムフラージュ。
2.周囲の風景や他の物とよく似た色や形にして、姿を見分けにくくすること。カムフラージュ。
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車窓からの風景の表現・描写・類語(地上・陸地のカテゴリ)の一覧 ランダム5
眼に蓋をするように、冷たい石垣が《…略…》視野一杯に滑りこんで来る。
武田 泰淳 / 風媒花 amazon
車窓の外を眺めていた。のっぺりとした平板な土地に、これという特徴のない建物が、どこまでも際限なく立ち並んでいる。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
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風がマストに当ると不吉に鳴った。
小林多喜二 / 蟹工船
軽い渋滞が起きていた。無理やりに車線変更をする車が後を絶たず、短いクラクションの応酬が何度かある。
伊坂 幸太郎 / グラスホッパー amazon
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雲の影が斜面の上に落ちると、その部分だけ獣の肌のように、くすんだ滑らかさに変わる
中村 真一郎 / 夜半楽 amazon
丘は幾つもの起伏となって一列に連なり、眠りについた巨大な猫のように、時の日だまりの中にうずくまっていた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
日かげと小さな湖を内包した森
綿矢 りさ / 仲良くしようか「勝手にふるえてろ (文春文庫)」に収録 amazon
臥した牛の背のように悠揚として空に曳くながい稜線
森 敦 / 月山 amazon
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