僕にとってもそれは孤独な季節であった。家に帰って服を脱ぐ度に、体中の骨が皮膚を突き破って飛び出してくるような気がしたものだ。僕の中に存在する得体の知れぬ力が間違った方向に進みつづけ、それが僕をどこか別の世界に連れこんでいくようにも思えた。
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 ページ位置:31% 作品を確認(amazon)
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孤独・一人ぼっち
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......と、少し間をおいてどうも、と彼女が言った。どうも、という以外の言葉を聞いたことがない。もっとも僕にしたところで電話ですよ、という以外の言葉を言ったこともない。 僕にとってもそれは孤独な季節であった。家に帰って服を脱ぐ度に、体中の骨が皮膚を突き破って飛び出してくるような気がしたものだ。僕の中に存在する得体の知れぬ力が間違った方向に進みつづけ、それが僕をどこか別の世界に連れこんでいくようにも思えた。 電話が鳴る、そしてこう思う。誰かが誰かに向けて何かを語ろうとしているのだ、と。僕自身に電話がかかってきたことは殆んどなかった。僕に向って何かを語ろうとする人間......
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