声音は、場内で一番大きく響いたが、誰も聞き咎 める様子もなかった。講演ですっかり声の灰汁 が脱けている。その上、この学者出の有名な社会事業家は、人格の丸味を一番声調で人に聞き取らせた。
岡本かの子 / 母子叙情 ページ位置:12% 作品を確認(青空文庫)
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柔らかい声・優しい声
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前後の文章を含んだ引用
......悪がるように、青年は首を後へぐっと引いて、うつ向いていた。青年は、父に促されて、父を通して、かの女たちに、かすかな挨拶をした。 老紳士が、かの女たちに話しかける声音は、場内で一番大きく響いたが、誰も聞き咎 める様子もなかった。講演ですっかり声の灰汁 が脱けている。その上、この学者出の有名な社会事業家は、人格の丸味を一番声調で人に聞き取らせた。老紳士は世間的には逸作の方に馴染 みは深かったが、しかし、職務上からは、はじめて遇 ったかの女の方にかねがね関心を持っていたらしい。それで逸作と暫 く世間話をしながら......
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湿った絹糸のような優しい声
獅子 文六 / てんやわんや amazon
夏のそよ風のような優しい声
村上 龍 / 恋はいつも未知なもの amazon
半熟たまごのようにやわらかい声
朝井 リョウ / 僕は魔法が使えない「もういちど生まれる (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
秋の月夜の風の中で細く慄える鈴虫の声のような、やさしい声
村上知行 / 殉情の人
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(大阪の女の声)くだものにたとえるならばちょうど御所柿のような、甘さの底にふと舌をすぼめる渋さの交った声であって、それは又そのままに大阪の女の性格であると思われる。
森田 たま / もめん随筆〈続〉 amazon
いつになく語尾を 跳ね上げ気味に話す口調に、十和子から電話をしたことをよほどうれしく思う姉の気持が表れている。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
(深夜の洗面台の前で二人きりになって思い出話)思い出話が終わると、もうお互いに喋る言葉が見つからなかった。二人の間をこぼれ落ちてゆく時間の音が、水の音とすり変わって、夜の果てまで細く連なっていった。
小川洋子 / ダイヴィング・プール「完璧な病室 (中公文庫)」に収録 amazon
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