昏々と死の眠りにつく

魂は、静に体から抜け出して、地獄の底へ下りて行きました。

最後の息が吐かれ、魂が身体を離れていく。

海の藻クズと消える

訪れた者たちは、次々に飛んで行ってしまった。流れ星のようにどこかに消えてしまったのだろうか。

血を流して横たわり、しだいに『もの』になって行く母の様子

人間が蛾のようにもろく亡んで行く。

永久に、中有（ちゅうう）の闇へ沈んでしまった。

人にはそれぞれ、あるとくべつな年代にしか手にすることのできないとくべつなものごとがある。それはささやかな炎のようなものだ。注意深く幸運な人はそれを大事に保ち、大きく育て、 松明 としてかざして生きていくことができる。でもひとたび失われてしまえば、その炎はもう永遠に取り戻せない。ぼくが失ったのはすみれだけではなかった。彼女といっしょに、ぼくはその貴重な炎までをも見失ってしまったのだ。

故人を追悼する