奥野画廊は銀座の通りに面していた。絶えず人通りがある。身なりのいい男や、美しい装いをした女の群れが通る。店の前は、そういう群衆の流れる小川のようなものだ。色彩のある水は両方から流れ交う。

人々がざわざわと汐（しお）が引くように路地の奥へ消えていく

大勢がただ泥のようになって動いているのでどれがどうとも識別（みわけ）がつかない

（銀座の人波）むらな雨雲のように押し合って塊ったり、意味なく途切れたりしつつ、大体の上では、町並の側と車道の側との二流れに分れて、さらさらと擦れ違って行く。すると、それがいかにも歓（よろこ）びに溢（あふ）れ、青春を持て剰（あま）している食後の夜の町のプロムナードの人種になって、特に銀座以外には見られぬ人種になって、上品で綺羅（きら）びやかな長蛇のような帯陣をなして流れて行く。

（電車が止まる）新宿駅で国電と接続する丸ノ内線が停まってしまったために、人の流れに混乱が生じ、人々は右往左往していた。帰宅ラッシュの時間は過ぎていたが、それでも人混みをかき分けて歩くのはやっかいな作業だった。

今はただ一色の白さに雪でおおわれている。そして雲が空を動くたびごとに、山は居住まいを直したかのように姿を変える。

あぜ道を通って、犬の糞を踏んづけながら小学校に通うぐらいの田舎

一日は紅茶に始まって紅茶に終る、といわれる英国人の朝はミルクティーから始まり、十時と三時にはティーブレイクという休み時間がある。

街を歩くと堯は自分が敏感な水準器になってしまったのを感じた。彼はだんだん呼吸が切迫して来る自分に気がつく。そして振り返って見るとその道は彼が知らなかったほどの傾斜をしているのだった。

隕石落下により、神社を中心とした広範囲が瞬時に壊滅した。家屋や森林の破壊に留まらず、衝撃により地表ごと大きくえぐられ、直径ほぼ一kmにも及ぶクレーターが形成された。さらに五km離れた地点でも一秒後にはマグニチュードの揺れが伝わり、十五秒後には爆風が吹き抜け、町の広範囲が甚大な被害に見舞われた。最終的な犠牲者は五百人以上にのぼり、それは町の人口の１／３にあたる。