机の上もまるでバッグの中身をぶちまけたかのように小物が散乱していた。

まるで作り物ではないかと思うほど綺麗に並んでいた食べ物やお菓子の山が、「お客様」の手であっという間に崩されていく。どこか偽物じみていた店が、その手でどんどん生々しく姿を変えていくようだった。

本棚に入りきらない多くの本が知的難民のように床に積み上げられていた。

悲しみと絶望の嵐が吹き抜けて行った後のように、折れつぶされた花々が無残に散乱する

キッチン下の扉が小さく開いている。積み重ねられた新聞紙の山が崩れている。壁に掛かっていたと思われるカレンダーが絨毯に落ちて、折れ曲がっていた。

印象を、牛が反芻するように何度も舌で味わう

ぜいたくとは何か。私にとってそれは、美しい男、よく磨かれた寝そべりやすい床、太陽を水面が反射するまぶしいほどの川岸。

この世にあっていけないほどぜいたく極まったもの

駱駝に乗って、広い沙漠を行くような、頼りない空虚な思い

朝晩はすっかり冷え込むようになったこの時期に、胸元や腕や足を露出したデザインのワンピースとハイヒールという格好で、アカシア商店街を闊歩する夏美さんは、さながら、田舎町を映画のロケのために訪れた女優のように見えました。