彼は、まるで流行に反抗でもするように、猶太 人の爺がかぶりそうな古びた山高帽を放さない。その山高のような特別さ、淋しいような満ち足りていないような何かが伸子の心をひくのであった。彼がもう若くないのに貧乏しつつそのような研究をしているらしいのが同情を誘うのであろうか。或は、自分が生活力の充実を感じて活々した女だから、逆に暗い彼の存在に興味を覚えるだけなのであろうか。
宮本百合子 / 伸子 ページ位置:6% 作品を確認(青空文庫)
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......あいても、佃に会うまでは持たなかった。佃の専門の研究について種々新しい話を聞くのは面白いのだが――伸子は考えた。彼はなぜああ特別な印象をひとに与えるのであろう。彼は、まるで流行に反抗でもするように、猶太 人の爺がかぶりそうな古びた山高帽を放さない。その山高のような特別さ、淋しいような満ち足りていないような何かが伸子の心をひくのであった。彼がもう若くないのに貧乏しつつそのような研究をしているらしいのが同情を誘うのであろうか。或は、自分が生活力の充実を感じて活々した女だから、逆に暗い彼の存在に興味を覚えるだけなのであろうか。――伸子は、くるりと長椅子の上で腹這いになり考えつづけた。 二三日おいて、佃は職業紹介所を調べた報告をもたらして来た。 南波武二の消息は何処でも得られなかった......
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魅力的な人の表現・描写・類語(人の印象のカテゴリ)の一覧 ランダム5
母が灯台としてあまりにこうこうと明るすぎるから、通りかかる船はみな混乱し、さまざまに奇妙な運命が寄ってきてしまう
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
(奥深い人)人ってもっと、変で薄汚くて、どろどろしてて、情けなくて、高貴で、無限の断層があるっていうかんじ。って、ずっと思ってた。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
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恋愛・恋する・恋心の表現・描写・類語(恋愛のカテゴリ)の一覧 ランダム5
過ぎて、振り返って、ああ懐かしいねなんて思い出の一コマになる恋じゃなくて、何年たっても、何十年たっても疼くような、タトゥみたいに、引き攣れた傷痕みたいに、ずっとずっと残ってしまって、決して消せなくて、疼き続ける恋がしたい。さらさらと流れてゆくのではなく、身体に刻み込まれてしまう恋をするんだ。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2〉 (文春文庫)」に収録 amazon
蒲団の中の暗闇に、英子の横顔が浮かびあがるようになってもう一年がたつ。
宮本 輝 / 螢川「螢川・泥の河(新潮文庫)」に収録 amazon
恋をすると、いつもダッシュで駆け抜けてゆくのが私のやり方だったが、曇った空からかいま見える星のように、今みたいな会話の度に、少しずつ好きになるかもしれない。
吉本 ばなな / キッチン「キッチン (角川文庫)」に収録 amazon
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「恋愛」カテゴリからランダム5
劇烈な物語にふさわしくない子守唄のような愛撫
三島 由紀夫 / 美徳のよろめき amazon
ヨシちゃんの表情には、あきらかに誰にも汚されていない処女のにおいがしていました。
太宰治 / 人間失格
会ったらまた会いたくなって、一回セックスをしたら、またしたくなって、二、三、四回って増えていって、それが恋だと思う
吉本 ばなな「アムリタ〈上〉 (新潮文庫)」に収録 amazon
(兄妹でデート)ご夫婦ですか? と聞かれる度に、公園の老夫婦を見かける度に、気まずくなっちゃうのよ。逃亡者みたいに。
吉本 ばなな「N・P (角川文庫)」に収録 amazon
「人の印象」カテゴリからランダム5
髪の黒さと唇の紅さが、顔の青白さを引き立て、ベッドの少女は周りの白さの中に今にも消えてしまいそうなほど、儚げだった。
あさの あつこ「ガールズ・ブルー (文春文庫)」に収録 amazon
(赤ん坊の名前)「あすか」とか「まどか」とか、ひらがなで書く柔らかい名前がいいな……
雫井 脩介「火の粉 (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
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