(2年ぶりに認知症の父を訪ね、窓際に座る小さくなった父を見て)離れたところから見ると、人間というよりは、ネズミやリスの類に近い生き物のように見えた。あまり清潔とは言えないが、それなりにしたたかな知恵を具えた生き物だ。《…略…》父親だった。あるいは父親の残骸とでも言うべきものだった。二年の歳月が彼の身体から多くのものを持ち去っていた。まるで収税吏(しゅうぜいり)が、貧しい家から情け容赦もなく家財道具を奪っていくみたいに。《…略…》今目の前にいるのは、ただの抜け殻に過ぎない。温かみを残らず奪われてしまった空き屋に過ぎない。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 2 作品を確認(amazon)
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老人
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単語の意味
残骸(ざんがい)
収税吏(しゅうぜいり)
身体(しんたい)
栗鼠(りす)
残骸・・・1.元の形をとどめないほど破壊された状態で残っているもの。
2.戦場や災害地に捨てられたままの死体。
2.戦場や災害地に捨てられたままの死体。
収税吏・・・税を取り立てる役人。政府のために税金を集める人。
身体・・・人のからだ。肉体。
栗鼠・・・リス科のげっ歯類の総称。森林にすむ小動物。夏毛は赤褐色、冬毛は黄褐色で、腹は白い。長くふさふさした尾を持つ。主に木の上で活動し、木の実や木の葉、昆虫などを食べる。木鼠(きねずみ)。
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病人が暗がりの中で、灰色の石のように横たわっている
遠藤 周作 / 沈黙 amazon
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骨と皮ばかり、という形容は珍しくないが、栄養分を取れば、またもとに太るという場合の痩せ方とは違って、いくら食べても栄養分が筋肉の方にまわらなくなった高齢者の痩せ方
丹羽文雄 / 厭がらせの年齢 amazon
入り口近くのベッドの上に座っていた老人が答える。しわだらけの顔、ぽちっとした黒目がちの目、禿げあがった額の具合、背をまるめてちょこんと座っている風情。どこをとってもオランウータンにそっくりだ。いまにもグルーミングを始めそうな、どことなく可愛い感じのする爺さんだ。
中島 らも / 今夜、すベてのバーで amazon
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(老いた象)象はひどく年老いていたので体を動かすのもやっとというありさまだったし、はじめてこの象を見た人は今にも地面に崩れ落ちて息を引きとってしまうのではないかと不安な気持になるくらいだった。
村上 春樹 / 象の消滅「新装版 パン屋再襲撃 (文春文庫)」に収録 amazon
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体が御輿(みこし)のように揉まれる
獅子 文六 / てんやわんや amazon
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(みみず腫れ)背中一面、隙間がないほど赤黒いみみずばれが、鯰(なまず)のように這っている
木山 捷平 / 長春五馬路 amazon
和子は芯から疲れきっていた。
沼田 まほかる「彼女がその名を知らない鳥たち (幻冬舎文庫)」に収録 amazon
狂人ほど人間を斬る
吉川英治 / 無宿人国記
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