ドラマを見て涙ぐむ

（暗い部屋でテレビを見る）映像の光に合わせて、彼女の横顔は様々な色に変化していた。

悪くない映画だったが途中で何度も考え事をしたので映画の筋がずたずたに分断されてしまった。《…略…》映画のエンドマークが出ると、僕は殆んど筋のわからないまま席を立って外に出た。

先ごろ見た映画〔愛の狩人〕は、アメリカ映画の新しいエネルギーが生み出した一種の快作というべきであった。

画面奥からの強い光源

（消灯した部屋でDVD鑑賞）パソコンの小さく発光する画面は、自宅のテレビで見ている時よりも、むしろ映画館にいる時のような没入感をもたらした。

ＤＶＤをデッキにセットする。色彩が躍り、ストーリーがはじまるのを眺めている。

カーテンを引いた薄暗い部屋。冷たい輝きを放つメニュー画面。

目が覚めるような（綺麗な）Retinaディスプレイ

消したテレビの暗い画面に映る濁った目

（ビリー・ワイルダー監督、お熱い夜をあなたに）画面の層が厚く、一つ一つのショットが、すべて映画の〔本道〕にのっている。いまどきの、大きな画面がやたらにゆれたり、クローズ・アップの濫用によって見物をやたらに混乱させる生理的な不快感がまったくないので、二時間半の長尺がいささかも疲れぬ。ユーモアとペイソスと、それよりも大きな主題が丹念に、流麗に積重ねられた一齣一齣から生れ、波紋のようなひろがりを見せて来る

（サイパンで聞いた歌に感動）聞いているだけで溶けていきそうだった。それなのに心のどこかが緊張して、連れていかれまいと涙をこらえるような、なつかしい、めくるめく感情の 堰 を、自分の中に感じる。ここで流れていったら、美しいものを知りすぎてしまう怖さで固くなる。 　しかし、聴いているうちに有無を言わさず、暴力的でかつ柔らかいその歌声に解放されて、サイパンの鮮やかな夜の中に自分は流れ出している。 　いつまでもここにいたい、

ステージはまるで積み木の見本みたいに様々なアンプやスピーカーが並んでいる

（天気予報）天気は明日から崩れるだろうと気象予報士が予言する

（詩人）詩人は共喰いの共産党だ。持ってるものは平等につかう。借金もそれ相当なもの。手近な目的はただ食べる事に追われるばっかり。人命終熄（しゅうそく）の一歩手前でうろうろしているばかりなり。天才は一人もいない。自分だけが天才と思っているからよ。それ故、私たちはダダイスト。只何となく感じやすく、激しやすく、信念を口にしやすい。何もないくせに、まずここんところから出発してゆくより仕方がない。

冷房の効き過ぎで、重藤は全身の汗が引いてゆくのを感じていた。

目が覚めるような（綺麗な）Retinaディスプレイ

冷気にぶるっと身震いして天井を見上げると、埋め込み型のエアコンの送風口が、ちょうど真上についている。

部屋には大きい瓦斯（ガス）ストーヴがもはやとうに火の働きを閉されて、コバルト色の刺繍（ししゅう）をした小布を冠（かぶ）されていた。

冷房の動かぬ冷たさで目が覚めて