晴れた窓からは、新宿の高層ビルの景色が見える。街中に、春の新しい風が吹き抜けていくのが、目に見えるようだった。

どこからともなく春の息吹が漂ってくる

春の柔らかさが風景をすべて包んでいた。庭の隅に押しやられている壊れた自転車でさえ、穏やかな風に吹かれていた。

鯉のぼりがバサバサと翻ってはグダリとなる

淡い新緑が粉を噴いているように見える

午後の日が暖かに春を炙（あぶ）っている

ぼんやりとした花曇りの白い空

百花花開く季節

冬枯の庭はいつか潤い、こまかに木の枝などを眺めると、仄かな艶や芽のふくらみが優しい早春を感じさせる日であった。

樹々は一斉に新緑に包まれ、溢れる日光を受けて歓びおののいた。空気にも、朝も、昼も、夜も鼻翼をくすぐる若葉の香がみちた。郊外の林間では、腐った去年の落葉の下から、いろいろな野花が咲きだした。