師走しわす の風に叩かれた道頓堀川の水面が、小さくさざめいていた。

風だけが草原を吹きわたっていた。まるでこの草原が風の特殊な通り道であるかのように見えた。風は重要な使命を帯びて先を急いでいるんだとでもいうように、あともふりかえらずに草原を走り抜けていった。

べたべたした風

初秋の風が芭蕉の葉を動かして、素肌に吹きつけた帰りに、読みかけた手紙を庭の方へなびかしたから、しまいぎわには四尺あまりの半切れ（＝手紙用の横長の和紙）がさらりさらりと鳴って、手を放すと、向こうの生垣まで飛んで行きそうだ。

けしかけるような風は、汚い煙突の煙を、みるみる白濛々の世界へ、襤褸屑（ぼろくず）をちぎって擲（たた）きつけるように飛ばして行った。

北（きた）から氷（こおり）のようにつめたいすきとおった風（かぜ）がゴーッとふいてきました。

花が折れそうなほどの寒風

切り裂くような風

耳元でぐるぐる 捩ねじれながら吹きすぎていく風の音

ときどき思い出したように風が吹き渡る