空調は、 斑（まだら） に効いていて、改めて椅子に腰掛けると、足許に冷気を感じた。

「強」にした暖房は、教室の木のにおいと人間のにおいをより強く薫らせる。

冷房の効き過ぎで、重藤は全身の汗が引いてゆくのを感じていた。

木の扉を開けると鈴の音が鳴り、クーラーの冷気に皮膚が引き締まるようだった。

冷気にぶるっと身震いして天井を見上げると、埋め込み型のエアコンの送風口が、ちょうど真上についている。

くるくるとよく動く扇風機

エアコンが低い機械音を立てて動き始め、《…略…》ちょっと生臭い鰹節のようなにおいのざらついた冷気がすべり落ちてくる。

お陽様に照らされている縁側の上に、送って来た蒲団を干していると、何故（なぜ）だか父様よ母様よと口に出して唱いたくなってくる。

スイッチを入れると、地の底から湧き上がるような低い唸りが一斉にあたりを被った。背筋が冷たくなるような音だ。そして次に、何万という鳥の群れが翼を広げるようなパタパタパタという音が続いた。《…略…》七十八台のピンボール・マシーンが電気を吸い込み、そしてそのスコアボードに何千個というゼロを叩き出す音だった。音が収まると、あとには蜂の群れのようなブーンという鈍い電気音だけが残った。そして倉庫は七十八台のピンボール・マシーンの束の間の生に満ちた。一台一台がフィールドに様々な原色の光を点滅させ、ボードに精いっぱいのそれぞれの夢を描き出していた。

冷房の効き過ぎで、重藤は全身の汗が引いてゆくのを感じていた。