風は、割合に粒の大きい軽 やかな初冬の雪片をあおり立てあおり立て横ざまに舞い飛ばした。雪片は暮れ残った光の迷子 のように、ちかちかした印象を見る人の目に与えながら、いたずら者らしくさんざん飛び回った元気にも似ず、降りたまった積雪の上に落ちるや否や、寒い薄紫の死を死んでしまう。ただ窓に来てあたる雪片だけがさらさらさらさらとささやかに音を立てるばかりで、他のすべてのやつらは残らず唖 だ。快活らしい白い唖の群れの舞踏――それは見る人を涙ぐませる。
有島武郎 / 生まれいずる悩み ページ位置:1% 作品を確認(青空文庫)
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雪
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前後の文章を含んだ引用
......の冬を知らないものには、日がいち早く蝕 まれるこの気味悪いさびしさは想像がつくまい。ニセコアンの丘陵の裂け目からまっしぐらにこの高原の畑地を目がけて吹きおろして来る風は、割合に粒の大きい軽 やかな初冬の雪片をあおり立てあおり立て横ざまに舞い飛ばした。雪片は暮れ残った光の迷子 のように、ちかちかした印象を見る人の目に与えながら、いたずら者らしくさんざん飛び回った元気にも似ず、降りたまった積雪の上に落ちるや否や、寒い薄紫の死を死んでしまう。ただ窓に来てあたる雪片だけがさらさらさらさらとささやかに音を立てるばかりで、他のすべてのやつらは残らず唖 だ。快活らしい白い唖の群れの舞踏――それは見る人を涙ぐませる。 私はさびしさのあまり筆をとめて窓の外をながめてみた。そして君の事を思った。 札幌 に住んでいるころだった。私の借り......
二
私が君に始めて会ったのは、私がまだ単語の意味
雪片(せっぺん)
暮れ残る(くれのこる)
初冬(しょとう・はつふゆ)
雪片・・・ひとひらの雪。空から落ちてくるときの雪の一粒。
暮れ残る・・・日が沈んだ後に、明るさだけがしばらく残る。
初冬・・・冬の初め。陰暦10月の異名。孟冬(もうとう)。
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店を出る頃には、雨は雪に変わっていた。 大気にたっぷりと満ちた湿気のおかげか、雪の舞う街は妙に暖かく、俺は間違った季節に迷い込んでしまったような不安をふいに感じる。
新海 誠「小説 君の名は。 (角川文庫)」に収録 amazon
羽毛のような軽やかな雪が舞い降りる
三浦哲郎 / ユタとふしぎな仲間たち amazon
吹雪は、まだ、二人の姿を消してしまうほど荒れていた
吉川英治 / 雲霧閻魔帳
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