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一回り背中が縮んだように見えた。少しでも触れると、泣き出しそうな背中だった。
吉田修一「悪人」に収録 ページ位置:72% 作品を確認(amazon)
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元気のない歩き方
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前後の文章を含んだ引用
......た露店の母親の元へ戻った。光代は必死にペダルを漕ぐ女の子の小さな背中を見送った。 そのとき、「本当に、ごめん」と頭を下げた祐一が、一人で駐車場のほうへ歩き出す。一回り背中が縮んだように見えた。少しでも触れると、泣き出しそうな背中だった。「警察って、どこの?」と光代は声をかけた。 振り向いた祐一が、「分からん、この辺なら唐津まで出ればあるやろ」と答える。 祐一の答えを訊きながら、そんなこともうど......
単語の意味
背中(せなか)
背中・・・背の中央。背骨のあたり。動物の胴体の背骨のある側。胸や腹と反対の面で、両肩の間から腰のあたりまでの部分。背(せ)。背面。
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(わが子が)「治らない」、つまりは 助からない、と知った時、里枝は、目に見えない何か乱暴な手に口を塞がれて、そのまま 鷲 摑 みにされたように、まったく息が出来なくなってしまった。体の内側が火がついたように熱くなり、また氷を詰め込まれたかのように冷たくなって、両手足を奇矯に擦り合わせながら、ただ泣くばかりだった。 その時、自分の体が何をしようとしていたのか、里枝は今ではわかる気がした。 そのまま、もう何もわからなくなるまで、狂ってしまおうとしていたのだった。
平野啓一郎「ある男」に収録 amazon
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すでに眠気が瞼を襲い始めている。
朝井 リョウ「武道館 (文春文庫)」に収録 amazon
長く引き延ばされた夕暮れのような一日だった。めりはりというものがない。窓の外の灰色に少しずつ黒が混じっていって、やがて夜になった。陰鬱さの質が少し変わっただけだった。世界には二色しか色が存在しなかった。灰色と黒。それが一定時間をおいて行ったり来たりしているだけなのだ。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(上) amazon
羽山純一は、薬缶の沸くのを待ちながら、所在なさそうにじっと薬缶に眼を注いでいる。
野間 宏 / 暗い絵「暗い絵・顔の中の赤い月 (講談社文芸文庫)」に収録 amazon
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