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朝の山には朝の命が、昼の山には昼の命があった。夕方の山にはまたしめやかな夕方の山の命がある。山の姿は、その線と陰日向 とばかりでなく、色彩にかけても、日が西に回るとすばらしい魔術のような不思議を現わした。峠のある部分は鋼鉄のように寒くかたく、また他の部分は気化した色素のように透明で消えうせそうだ。夕方に近づくにつれて、やや煙り始めた空気の中に、声も立てずに粛然とそびえているその姿には、くんでもくんでも尽きない平明な神秘が宿っている。
有島武郎 / 生まれいずる悩み ページ位置:84% 作品を確認(青空文庫)
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夕方
山
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前後の文章を含んだ引用
......う事も忘れて、四枚も五枚ものスケッチを作った時には、もうだいぶ日は傾いている。 しかしとてもそこを立ち去る事はできないほど、自然は絶えず美しくよみがえって行く。朝の山には朝の命が、昼の山には昼の命があった。夕方の山にはまたしめやかな夕方の山の命がある。山の姿は、その線と陰日向 とばかりでなく、色彩にかけても、日が西に回るとすばらしい魔術のような不思議を現わした。峠のある部分は鋼鉄のように寒くかたく、また他の部分は気化した色素のように透明で消えうせそうだ。夕方に近づくにつれて、やや煙り始めた空気の中に、声も立てずに粛然とそびえているその姿には、くんでもくんでも尽きない平明な神秘が宿っている。見ると山の八合目と覚しい空高く、小さな黒い点が静かに動いて輪を描いている。それは一羽の大鷲 に違いない。目を定めてよく見ると、長く伸ばした両の翼を微塵 も動かさずに......
単語の意味
粛然(しゅくぜん)
平明(へいめい)
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵(すがた)
粛然・・・シーンと静まり返っているようす。また、礼儀正しく大人しくしているようす。「然」は他の語の後ろに付いて、状態をあらわす字。
平明・・・表現の仕方が、分かりやすくハッキリしていること。また、そのさま。
姿・形・容・態・躰・體・軆・骵・・・1.身体の形。からだつき。人のからだの格好。衣服をつけた外見のようす。
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
2.身なり。容姿。
3.目に見える、人の形。人の存在。
4.物の、それ自体の形。物一つ一つの全体的な印象。
5.物事のありさまや状態。事の内容を示す様相。
以下の文字は訓読みで、「すがた」と読める。
[形・容・態・躰・軆・體・骵]
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店の外に出ると、夕暮れだった。白いマンションや白い人間達から順に夕暮れの色になっていく。
又吉直樹「劇場(新潮文庫)」に収録 amazon
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二つの溪の間へ楔子 のように立っている山
梶井基次郎 / 蒼穹
硯を立てたような山容である。
林 芙美子 / 浮雲 amazon
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岬がなだらかに女の腕のような線を描いてのびている。
安岡 章太郎 / 海辺の光景 amazon
見下ろせば地図のような地表が見える
滝口 悠生 / 死んでいない者 amazon
多摩川にせり出した、切り立った崖
綿矢 りさ / かわいそうだね?「かわいそうだね? (文春文庫)」に収録 amazon
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午後三時四十五分。夕方を意識させる時間だった。
横山 秀夫 / 半落ち amazon
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