ひたすら進み入ろうとするその世界は、果てしも知らぬ白濁 の波の彼方 の渾沌未分の世界である。《…略…》どこまでもどこまでも白濁無限の波に向って抜き手を切って行く
岡本かの子 / 渾沌未分 ページ位置:98% 作品を確認(青空文庫)
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泳ぐ
未来・将来
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前後の文章を含んだ引用
......して目的を立ててはいけない。決して打算をしてはいけない。自分の一切を賽 にして、投げてみるだけだ。そこから本当に再び立ち上がれる大丈夫な命が見付かって来よう。今、なんにも惜 むな。今、自分の持ち合せ全部をみんな抛げ捨てろ――一切合財を抛げ捨てろ――。 渾沌未分………… 渾沌未分………… 小初がひたすら進み入ろうとするその世界は、果てしも知らぬ白濁 の波の彼方 の渾沌未分の世界である。 「泳ぎつく処 まで……どこまでも……どこまでも……誰も決してついて来るな」 と口に出しては云わなかったが、小初は高まる波間に首を上げて、背後の波間に二人の男のつい《…略…》…」 風の加った雨脚 の激しい海の真只中 だ。もはや、小初の背後の波間には追って来る一人の男の姿も見えない。灰色の恍惚からあふれ出る涙をぼろぼろこぼしながら、小初はどこまでもどこまでも白濁無限の波に向って抜き手を切って行くのであった。
(昭和十一年九月)
単語の意味
白濁(はくだく)
混沌・渾沌(こんとん)
抜き手(ぬきて)
抜き手を切る(ぬきてをきる)
白濁・・・白く濁ること。
混沌・渾沌・・・ぐちゃぐちゃに入り混じっていて、それぞれの区別がつかない状態。物事が混じり合って、区別の無い世界。カオス。
抜き手・・・日本古来からある泳ぎ方の一つ。水をかいた腕を前方に出すとき、水面上に抜き出して泳ぐ。
抜き手を切る・・・抜き手という泳ぎ方で泳ぐこと。
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もし水泳競技にターンがなく、距離表示もなかったとしたら、400メートルを全力で泳ぎきるという作業は救いのない暗黒の地獄であるに違いない
村上春樹 / 回転木馬のデッド・ヒート(プールサイド) amazon
吉川英治 / 銀河まつり
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未来・将来の表現・描写・類語(時間・スピードのカテゴリ)の一覧 ランダム5
「あなたが葉書を書く未来も、書かない未来もあるということです。未来はいくつもの枝葉に分れています」
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
(この先何が起こるか分からない)深い池に石を放り込む。どぼん。大きな音があたりに響き渡る。このあと池から何が出てくるのか、私たちは固唾を呑んで見守っている。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
過去と現在についてはこのとおり。未来については「おそらく」である
村上 春樹「1973年のピンボール (講談社文庫)」に収録 amazon
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花のようにパッと咲いてはいずれも花のように散ってどこかへいなくなってしまった実にたくさんのレヴィウの踊り子たち
高見 順 / 如何なる星の下に amazon
竹筒を口にあてがい、鶏が水を飲むように 咽喉 をならしていた。
遠藤周作「沈黙(新潮文庫)」に収録 amazon
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(この先何が起こるか分からない)深い池に石を放り込む。どぼん。大きな音があたりに響き渡る。このあと池から何が出てくるのか、私たちは固唾を呑んで見守っている。
村上 春樹 / 1Q84 BOOK 1 amazon
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