空は雲でいちように覆われている。不吉な未来を思わせる黒々としたものではない。銀行強盗たちの仕事ぶりをにやにやしながら見下ろしている、そんな空だった。

笠原メイがいなくなってしまうと、僕の体は再びあのつぎめひとつないのっぺりとした灰色の雲のかげに覆われてしまったように感じられた。

薄い雲が中心で明るい曇り空

空は薄く雲って青空は見えないが、雨の降る気配はない

嵐が来る前のように暗い空

カーテンの僅な隙間から、一本の震える細い金線のような光線が薄暗い部屋に射しこみ、化粧台の上の白粉壺に、小さい燃える炬火（たいまつ）のような閃きをつくっている。

鳥井は講義棟を背にし、僕をまっすぐに見た。建物の後ろに太陽が隠れていたが、そこからはみ出した陽射しが、こちらを狙うように射し込んできた。鳥井の左肩にその光が反射し、僕には一瞬、彼の左腕が見えなくなった。

夕暮の光はさきほどより力を失い、土間の隅には夕影が少しずつ忍びこみはじめた。

ひとりのときに部屋を貫くように差し込んでくる太陽は嫌いだ。ひとりのあたしに、あたしはひとりだとまんまと思わせるからだ。窓から外を見たりなんかすると、アスファルトでさえ宝石でも紛れ込ませているかのようにきらきらしているように見える。太陽は、ひとりの自分を嫌いになるようにしむけてくる。

雨あがりの夕暮れは格別だった。