数え切れないほどの雲があとからあとから、かさにかかった軍団のように押し寄せてくる。

雲の群れは倦むことなく空を南に向けて横切っていった。様々なかたちとサイズの雲がやってきて、そして去っていった。中にはずいぶん興味深いかたちをした雲もあった。彼らには彼らなりの考えがあるように見えた。小さく堅く、輪郭のはっきりとした考えが。

曇った空に雨をふくんだ雲が船のようにゆっくり流れ

杉山の上から青空の透いて見えるほど淡い雲が絶えず湧いて来るのを見たとき、不知不識（しらずしらず）そのなかへ吸い込まれて行った。湧き出て来る雲は見る見る日に輝いた巨大な姿を空のなかへ拡げるのであった。 　それは一方からの尽きない生成とともにゆっくり旋回していた。また一方では捲きあがって行った縁（へり）が絶えず青空のなかへ消え込むのだった。こうした雲の変化ほど見る人の心に言い知れぬ深い感情を喚（よ）び起こすものはない。

むくむくと湧き上る雲の流れ

頭上には泰然と三日月がある。その美しさは平凡な奇跡だ。

緩やかに月の光の帯は色を変え、角度を変え、夜は深まってゆく。

薄明るい空に、だんだらになった白い雲が、卵の白身のように泡立っている。

重く垂れ込めた雲の裂け目から夕焼けが滲んで見える

二つの月は、世界を奇妙な光で照らしている。