三月末の夕方の空はなごやかだった。庭先の一重 桜のこずえには南に向いたほうに白い花 べんがどこからか飛んで来てくっついたようにちらほら見え出していた、その先には赤く霜枯れた杉森 がゆるやかに暮れ初 めて、光を含んだ青空が静かに流れるように漂っていた。
有島武郎 / 或る女(後編) ページ位置:51% 作品を確認(青空文庫)
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春の夕方・夜
桜
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前後の文章を含んだ引用
......沈黙した後に、当惑しきったようにさびしく岡は独語 ちてまた黙ってしまった。岡はどんなにさびしそうな時でもなかなか泣かなかった。それが彼をいっそうさびしく見せた。 三月末の夕方の空はなごやかだった。庭先の一重 桜のこずえには南に向いたほうに白い花 べんがどこからか飛んで来てくっついたようにちらほら見え出していた、その先には赤く霜枯れた杉森 がゆるやかに暮れ初 めて、光を含んだ青空が静かに流れるように漂っていた。苔香園 のほうから園丁が間遠 に鋏 をならす音が聞こえるばかりだった。 若さから置いて行かれる……そうしたさびしみが嫉妬 にかわってひしひしと葉子を襲って来た。葉子はふ......
単語の意味
含む(ふくむ)
霜枯れ(しもがれ)
青空(あおぞら)
含む・・・1.口の中に入れて噛んだり飲み込んだりせず、そのままの状態のこと。
2.ある気持ちを態度に示したり、なんとなくにおわす。「憂いを含んだ表情」
3.ある範囲の中にその要素が入っていること。「サービス料を含んだ値段」
2.ある気持ちを態度に示したり、なんとなくにおわす。「憂いを含んだ表情」
3.ある範囲の中にその要素が入っていること。「サービス料を含んだ値段」
青空・・・1.青く晴れた空。雲のない青い空。青く澄んで見える空。碧空。蒼天。
2.他の語に付いて「戸外で行う」「屋外」「露天」の意味を表す。
2.他の語に付いて「戸外で行う」「屋外」「露天」の意味を表す。
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春の夕方・夜の表現・描写・類語(春のカテゴリ)の一覧 ランダム5
花曇りに暮れを急いだ日は疾 く落ちて、表を通る駒下駄の音さえ手に取るように茶の間へ響く。隣町 の下宿で明笛 を吹くのが絶えたり続いたりして眠い耳底 に折々鈍い刺激を与える。外面 は大方朧 であろう。
夏目漱石 / 吾輩は猫である
アケビの蔓の、花は明るい紫色だ。 もちろん、そのときは木の名前なんか知らない。ただ、「きれいだなあ」と、夜が近づきあたりが見えなくなるのを惜しむばかりだった。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
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桜の表現・描写・類語(春のカテゴリ)の一覧 ランダム5
神去桜は、年月を経て苔むした幹をうねらせ、山頂の空いっぱいに枝を広げていた。 大木を取り巻くように、村人が弁当を広げている。花の天井の下で、各人が持ち寄ったおかずを自由につつき、酒を酌み交わす。
三浦 しをん「神去なあなあ日常 (徳間文庫)」に収録 amazon
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「春」カテゴリからランダム5
ちかちか輝く薄緑のレースで飾られる美しい春の森
松谷みよ子 / オバケちゃん amazon
札幌の六月は素敵な季節だった。雪解けはずっと前に終わり、ほんの数ヶ月前には固く凍えていた大地は今は黒々として、柔らかな生命の息吹をたたえていた。木々は青い葉をいっぱいに茂らせ、清潔で優しい風がその葉を揺らせていた。空は高く透き通り、雲は輪郭をくっきりとさせていた。
村上 春樹 / ダンス・ダンス・ダンス(下) amazon
俺は春に咲く桜が好きだ。伊藤はどうだ? あんなに優しい色をした、身一杯に花を付けた魅力的な木があるか?
伊坂 幸太郎 / オーデュボンの祈り amazon
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