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モルヒネを注射しました。不安も、焦燥 も、はにかみも、綺麗 に除去せられ、自分は甚だ陽気な能弁家になるのでした。そうして、その注射をすると自分は、からだの衰弱も忘れて、漫画の仕事に精が出て、自分で画きながら噴き出してしまうほど珍妙な趣向が生れるのでした。 一日一本のつもりが、二本になり、四本になった頃には、自分はもうそれが無ければ、仕事が出来ないようになっていました。
太宰治 / 人間失格 ページ位置:91% 作品を確認(青空文庫)
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麻薬・覚せい剤・ドラッグ
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前後の文章を含んだ引用
......、酒の酔いもさすがに不潔に感ぜられて来た矢先でもあったし、久し振りにアルコールというサタンからのがれる事の出来る喜びもあり、何の躊躇 も無く、自分は自分の腕に、そのモルヒネを注射しました。不安も、焦燥 も、はにかみも、綺麗 に除去せられ、自分は甚だ陽気な能弁家になるのでした。そうして、その注射をすると自分は、からだの衰弱も忘れて、漫画の仕事に精が出て、自分で画きながら噴き出してしまうほど珍妙な趣向が生れるのでした。 一日一本のつもりが、二本になり、四本になった頃には、自分はもうそれが無ければ、仕事が出来ないようになっていました。 「いけませんよ、中毒になったら、そりゃもう、たいへんです」 薬屋の奥さんにそう言われると、自分はもう可成りの中毒患者になってしまったような気がして来て、(......
単語の意味
焦燥(しょうそう)
陽気(ようき)
焦燥・・・苛立ち。焦り。イライラすること。
陽気・・・1.天候。時候。
2.万物が動き、生まれ出ようとする気。陽の気。
2.万物が動き、生まれ出ようとする気。陽の気。
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麻薬・覚せい剤・ドラッグの表現・描写・類語(事件・事故のカテゴリ)の一覧 ランダム5
部屋では中央に拳程もあるハシシが香炉で焚かれ、立ち込める煙は呼吸のたびに否応なく胸に入ってくる。三十秒もたたないうちに完全に酩酊する。からだ中の毛穴から内臓がドロドロと這い出し、他人の汗やら吐く息が入り込んでくるような錯覚に陥いる。
特に下半身は重い沼につかったように爛れ、口は誰かの器官をくわえたくて、体液を飲み込みたくてムズムズしている。皿に盛られた果物を食べワインを飲むうちに、部屋全体が熱の冒され始めて、自分の皮膚を引き剥がして欲しいと思う。ツルツルした油にまみれている黒人達の肉体を体内に入れて揺すりたいと感じている。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
オキナワ(人の名)は注射針の先端をライターで炙っている。アルコールで湿した脱脂綿で拭いて消毒してから息を吹き入れ穴が詰まっていないかテストする。《…略…》アルミ箔のヘロインを耳掻きで中央に集め《…略…》スプーンの中に、マッチ棒の頭くらいの量だけ耳掻きでヘロインを入れる。《…略…》スポイトで吸い上げる戦場用の一CC注射器に針を填(は)める。レイ子が蝋燭に火をつけた。注射器で、スプーンの中のヘロインに注意深く水滴を垂らす。《…略…》スプーンを蝋燭に翳(かざ)す。あっという間に水溶液は沸騰する。スプーンは内側に泡と湯気をたて、底は黒い煤で汚れる。オキナワはゆっくりと火から離し、赤ん坊にスープを飲ませる時のように息を吹きかけて冷やす。《…略…》小さくちぎった親指の爪程の脱脂綿をさめた液に浸す。オキナワは湿って重くなった脱脂綿の中に針先を沈めた。かすかな音を出して、ちょうど赤ん坊が乳を吸うような音で透明な液体が細いガラス管に少しずつ溜まっていく。吸い終わると唇を舌で舐めながら、オキナワは少しだけスポイトを押し、注射器内の空気を抜く。《…略…》レイ子は口を尖らせてオキナワを睨み皮紐で僕の腕をきつく絞り上げた。左拳を握りしめると太い血管が浮き出る。アルコールで二、三度擦るとオキナワは濡れている針先を脹れた血管目がけて皮膚に沈めた。握りしめていた拳を開くとシリンダー内に黒っぽい僕の血が逆流してくる。ほらほらほら、と言いながらオキナワはスポイトを静かに押し、血と混じり合ったヘロインを一気に僕の中に入れた。
村上 龍 / 限りなく透明に近いブルー amazon
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「事件・事故」カテゴリからランダム5
焼け跡から吹きつけてくるザラザラした異様な風は、まるで不快な固物の撫で回すような感触を持っていた。
井上 友一郎 / ハイネの月「日本の文学 64 井上友一郎」に収録 amazon
「薬が無いと仕事がちっとも、はかどらないんだよ。僕には、あれは強精剤みたいなものなんだ」
太宰治 / 人間失格
いつもであれば自分が車を調達するスポットであるだけに、自分の車も何者かに盗まれてしまうのではないか、と不安な気分になった。「人を見れば泥棒と思え」という言葉はきっと泥棒自身が考案したものだろう。
伊坂 幸太郎「陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)」に収録 amazon
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