杏仁豆腐は白磁を思わせるような白一色。清潔、無垢、清浄。すべすべした白いお肌、ふるふるしたその物腰、ぬめぬめと湿った舌ざわり、にょろにょろした立ち居振る舞い、にゅるにゅるした腰のくねり、飲物ではなく、噛みものでなく、媚態さえ感じさせて舞台の袖に消えていく雅やかなその風情、そしてかすかな残り香。

（杏仁豆腐の高貴な残り香）竜宮城の乙姫様のお肌の香りはきっとこんな香りだろうな、と思わせるような香り

いまから二十年ほど前までは、杏仁豆腐はどこにも売ってなかった。デパートでさえ売ってなかった。ではどこでとうやって食べるのかというと、高級中華料理店に行って食べるよりほかなかった。高級中華料理店でコース料理を食べると、最後のデザートとして出てくるのが杏仁豆腐だったのである。

杏仁豆腐を口に入れて飲み込むとうっとりし、うっとりしたあとなんとなく女性的な気分になる。なんとなくナヨナヨしてしまう。杏仁豆腐をスプーンですくいあげる小指がいつのまにか立っている。

見た目は、オレンジ＋カラメルだが、カラメルは香りづけ程度で、濃厚なオレンジの味がする

冷え切ったゼリーが、酔いにかわいた口中へすべりこむ

ほんのり香るバターに、甘いメイプルシロップ、みんなに愛される王道の組み合わせ

スフレの真ん中をスプーンでくり抜きパクリ。玉子の柔らかな香りと、穏やかな甘さがいっぱいに広がる

果肉がたっぷり入っているが嬉しい