ぬくもる闇のなかで耳を圧迫するような蛙と虫の圧倒的な音楽に包囲される

地底から風のように舞い上がってくる蝙蝠（こうもり）たちの凄い羽音

桜色の絹のような（牛の）乳の袋

動物が波のように走る

らくだのくっさい息

（ウサギの毛の感触は）かつて触れたことのあるどんな種類のものとも、異なる手触りを持っていた。うっとりするぐらい滑らかでありながら、一本一本の毛にはどこか鋭い気配が潜み、指先が沈んでゆくのかと錯覚するほど奥が深い。一撫でするごとに斑の形が変化し、毛を押し開いた時現れる未熟な皮膚には、薄桃色の中身が透けている。

天鵞毛（びろうど）を欺（あざむ）くほどの滑（なめ）らかな満身の毛は春の光りを反射して風なきにむらむらと微動するごとくに思われる。

イカが黒煙のような墨を吐き出す

駿馬が矢のように駆ける

（小猿が）小憎らしい梅干婆さんのように、まことにおとなしくきょとんとしている。