馬鹿みたいに晴れ上がった夏の陽にに首筋を焼かれる

目を開けていられないほどの、ぎらぎらの陽射し！

熱い空気がじっとりと汗ばんだ全身を包んでいた。目を閉じると、まぶたの裏が赤かった。陽に焼けていく。

さっき通った牛車（ぎっしゃ）のわだちが長々とうねっているばかり、その車の輪にひかれた、小さな蛇（ながむし）も、切れ口の肉を青ませながら、始めは尾をぴくぴくやっていたが、いつか脂（あぶら）ぎった腹を上へ向けて、もう鱗（うろこ）一つ動かさないようになってしまった。どこもかしこも、炎天のほこりを浴びたこの町の辻で、わずかに一滴の湿りを点じたものがあるとすれば、それはこの蛇（ながむし）の切れ口から出た、なまぐさい腐れ水ばかりであろう。

暮れ鈍る夏の宵の光りが、景物をほの黒く浮かせる

末遠いパノラマのなかで、花火は星水母（くらげ）ほどのさやけさに光っては消えた。

八（や）つ口（くち）の綻（ほころ）びから秋風（あきかぜ）が断わりなしに膚（はだ）を撫（な）でてはっくしょ風邪（かぜ）を引いたと云う頃

銅像が炎天に煑（に）えて姿態（ポーズ）の角々から青空に陽炎を立てゝいるように見える。

晩春の花の萼（がく）をまだつけている新果のような五月のある朝

一雨ごとに、芒（すすき）はのびて、もう武蔵野は、夏めいてくる。