渇いた大地が降りそそぐ（雨の）しずくを受けるときの、銀の鈴を鳴らすような接吻

温かいシャワーのような雨

亜美ちゃんは傘をちゃんと差してきたから、ただ泣いているだけなのに、全身がびちょびちょに濡れて見えた。

（雨の店内）安酒のにおい、汗のにおい、食料脂のにおい、――、そういうものが雨で立籠められたうえ、靴の底から蹴上げられる埃と煙草の煙に混（まじ）り合って部屋の中の空気を重く濁した。

それほど激しい降りではないが、おそろしく執拗な性質を持った雨だった。前日の昼過ぎに降り始めてから一度も降り止んでいない。そろそろ降り止みそうかなと思ったところで、また思い出したように雨脚が強くなる。

雨が新鮮に映り、いつもと違う世界を喜びをもって見つめた時が（子供のころにあった）

かじかんでこの雪の中を野良犬のように歩いている

ジャブジャブと泳ぐように雨の中を歩く

風雨は激しく、窓外はまるでつなみのような音をたてて樹木が鳴っていた。

薄い霧だか 烟 だか港一杯に拡がって